この施術に関して
乳がん術後の乳房再建や豊胸などでは脂肪注入を行うのが時代の潮流となっています。
自分の組織を移動するだけなので拒絶反応や異物アレルギー反応、そして感染などの危険性が少ない治療です。
乳房は柔らかい組織です。脂肪移植で作られた乳房は、他の治療法(インプラント、その他の注入系)にはない自然で本来の乳房の感触をもったものとなります。
今回のような全摘後で難しいケースでも一時的な拡張器(インプラント)の挿入と脂肪注入を組み合わせたハイブリッドで行うことで良い結果が得られます。
今回受けて頂いた方も大変喜んでおられて、多くの女性たちが悩んでいることに少しでも解決の糸口になればというご好意で、写真掲載許可をいただきました。
今回施行した治療は、インプラント(拡張器)+脂肪注入によるハイブリッド(混合)治療です。
*どうして、ハイブリットなのか?脂肪注入だけではいけないのか??それを以下でご説明します。
人工物であるインプラントは今回のケースでは望まれませんでした。人工物が体内に留置されることに抵抗がありました。
そうなると、全摘術後の人工物を用いない再建で通常行われる方法は、自家組織移植という方法です。
広背筋皮弁法や腹直筋皮弁法などをもちいる方法です。これらは侵襲度の大きい手術となり、入院治療が必要です。
一方、最近、全世界的に急速な広がりを見せている脂肪移植法があります。
脂肪移植法は、前述の皮弁法よりも自由度が高く、侵襲度が小さい手術法です。
乳房再建に留まらず、豊胸術などにも多くの施設で行われているのが現状です。
今回は、その脂肪注入法(脂肪移植法)にて治療を行いました。
今回のケースでは20年前に右乳房全摘が行われています。術前写真を見てもらえればお分かりかと思いますが、外側から内側に向かって斜めに大きなキズ痕があります(乳腺全摘による手術創です)。
そのキズの周りは高度な癒着をしていました。そして、皮下組織はほぼなくて肋骨が浮き出てしまっています。
施術前MRIを行いました。
術前MRI
*左乳房には皮下脂肪組織が認められます。このスライスでは乳腺組織は確認できませんが、左乳房には乳腺組織と脂肪組織が認められます。一方、右乳房には左のような脂肪組織は認められず皮下直下には大胸筋がすぐ認められます。
大胸筋が残っていても皮膚との間にほんの少ししかスペースがないため、脂肪注入をしても脂肪を移植する量は限りがあります。また、脂肪注入ができたとしても窮屈(スペースがない)なところに脂肪をいれるため、内圧が高まり移植した脂肪組織に優しくありません。結果的にはそれが上手く生着せず、壊死=生着不良という結果を招くことも考えられます。
したがって、まずはスペース作りが必要でありました。そのスペース作りには体内に拡張器(インプラント)を留置して行い、段階的(3段階)に手術を行っていきました。
#1. ファーストステップ(1st Step)
乳がん術後の同じ創部から拡張器の留置
#2. セカンドステップ(2nd Step)
拡張器を徐々に膨らまし最大限になるところまで行った後に、拡張器を萎ませます。スペースができた部位であるデコルテに脂肪注入。
#3. サードステップ(3rd Step)
拡張器を抜去して、2回目の脂肪注入。
術後の経過
術前
1回目の手術
1回目の手術中
1回目の手術 術後1週間
インプラントの拡張
拡張する際は、ポートと呼ばれる部位に針を刺して消毒液と混ぜた生理食塩水を入れていきます。
皮膚のハリ感など拡張している段階で感じます。
2回目の手術前
2回目の手術中
2回目の手術 術後3ヶ月
3回目の手術
3回目の手術終了直後
施術カテゴリー
施術の説明:
拡張器を挿入して胸壁を拡張させます。拡張させた部位に脂肪注入を行います。
施術のリスク:
出血、感染、脂肪注入によるシコり、脂肪吸引した部位の近く障害、皮膚の凹凸など
施術費用:1回の施術 ¥300,000(税別)
60代 女性です。
乳がん、右乳房全摘術後の乳房再建です。
乳がん全摘後の乳房再建は究極の豊胸術です。
乳がん全摘とは、乳房=乳腺組織および周囲の脂肪組織が一塊(ひとかたまり)として摘出されます。
よって、全摘後では
女性である象徴として存在する乳房が全くない状態。
「おっぱいがなくなってしまった」、「肋骨が浮き出てしまっている」など、
手術後に心を痛めている方が多くいらっしゃいます。
乳房の機能として重要な役割は『授乳』です。
授乳時期が終了すると、乳房はそれほど重要な器官ではないように思うかもしれません・・・
ですが、
乳がんによって引き起こされる“乳房喪失”は、
著しい外観の変化によるボディーイメージの低下は心理面に大きく影響を及ぼします。
その後の生活の質=Quality of Life(QOL)にも大きく影響を及ぼします。
例えば、
などです。
今回ご紹介する方もその一人でした。乳がんは約20年前に診断され、治療が行われました。