
肌の下にできるしこりやふくらみが気になって、思わず自分で潰したり取ろうとしたことはありませんか?その正体は「粉瘤(ふんりゅう)」と呼ばれる良性腫瘍である可能性が高く、一見ニキビや皮膚のしこりと区別がつきにくいため、自己処理してしまう方も少なくありません。
しかし、粉瘤は見た目以上に厄介な存在です。自己処理は再発や感染など、さまざまなリスクを伴います。
今回の記事では、粉瘤を自分で取ったり潰したりすることの危険性や、形成外科で受けられる適切な治療方法について詳しく解説します。
結論から言えば、「粉瘤は自分でいじらず、医療機関での治療が安全で確実」です。
粉瘤を自分で取ったり、潰したらどうなる?

粉瘤とは?
粉瘤(アテローム)は皮膚の下にできた袋の中に、老廃物や角質、皮脂がたまってできる良性腫瘍です。
中央に小さな黒点(開口部)があり、そこから内容物が臭いを伴って出てくることもあります。
粉瘤は絶対に自分で潰したり、切ったりしてはいけません。
見た目がニキビに似ているため、押しつぶして中身を出したくなりますが、それは非常に危険な行為です。
自己処理するとどうなるか
- 中身が一部しか出ず、袋が皮膚内に残る
- ばい菌が入って炎症を起こす
- 膿がたまり、激しい腫れと痛みが出る
- 再発を繰り返す
- 傷跡が残りやすくなる
たとえ一時的にしこりが消えても、袋が残っていればまた中身がたまり、再発してしまいます。しかも次にできたときは炎症性粉瘤といって、強い赤みや痛み、発熱を伴うこともあります。
粉瘤を自分で潰した場合のリスク

粉瘤を自分で潰すと、感染・再発・傷跡など、デメリットが非常に多く、次のようなトラブルを招くことがあります。
- 1. 感染症のリスク
皮膚を無理に破ることで、細菌が内部に入り込みやすくなります。
結果として、化膿性炎症を起こし、赤く腫れあがって激痛が走るようになることがあります。
場合によっては抗生剤や切開排膿が必要になり、処置がより大掛かりになります。
- 2. 再発率が非常に高くなる
粉瘤は袋状の構造(嚢腫)を持っているため、中身を絞り出すだけでは根本的な治療にはなりません。
袋を完全に取り除かない限り、何度でも再発してしまいます。
- 3. 傷跡・色素沈着が残りやすい
自分で潰すと、強い圧力や雑菌感染によって皮膚が損傷します。
その結果、クレーターのような陥没や赤黒いシミが残ってしまう可能性が高くなります。
- 4. 周囲組織への炎症拡大
粉瘤が破れて皮膚の中で炎症が広がると、腫れや熱感が周囲まで及びます。
重度になると蜂窩織炎(ほうかしきえん)や膿瘍(のうよう)といった深刻な感染症を引き起こすこともあります。
粉瘤をきれいに治すには?

根本治療は「袋ごと除去」することです。粉瘤をきれいに治すためには、以下の3つのポイントが重要です。
- 完全に取り除く
中身だけでなく、粉瘤を包んでいる袋状の構造そのものを摘出することが不可欠です。
これにより、再発のリスクをほぼゼロに抑えられます。
- 炎症がない状態で手術するのがベスト
炎症が起きていると、袋が破れやすくなり、手術が難しくなることがあります。
できるだけ炎症が起きる前、腫れていない段階で受診することをおすすめします。
- 傷跡が目立たないように治療してもらう
形成外科では、皮膚のしわやラインに沿った切開を工夫し、できるだけ目立たないように縫合してもらえます。
美容面が気になる方にも適しています。
粉瘤治療を受けることができる診療科

形成外科または皮膚科を受診しましょう。粉瘤の治療は、以下の診療科で受けることが可能です。
診療科 |
特徴 |
皮膚科 |
小さい粉瘤や初期段階の炎症に対応。薬の処方や経過観察中心。手術は対応外のこともあり。 |
形成外科 |
手術による摘出が専門。美容面や傷跡に配慮した処置が可能。 |
Dr.三沢
迷ったら形成外科へ。特に、顔や首など目立つ場所の粉瘤や、大きくなってきた粉瘤は、形成外科での治療を強くおすすめします。粉瘤は“腫瘍”という扱いなので、見た目だけでなく医療的な処置が必要です。
形成外科での粉瘤の治療法

具体的には、次のような流れで治療が行われます。
1. 診察・診断
視診・触診・問診により粉瘤かどうかを判断します。
必要に応じてエコーやMRIなどの画像検査を行うこともあります。
2. 手術(局所麻酔)
粉瘤の袋を含めて完全に取り除くため、局所麻酔をかけてメスで切開します。
内容物を取り出し、周囲組織と癒着している部分を丁寧に剥がし、袋を丸ごと摘出します。
手術時間は15〜30分程度が一般的です。
3. 縫合・抜糸
傷を丁寧に縫合し、1週間程度で抜糸となります。
形成外科では、傷跡ができるだけ目立たないように縫合技術にも配慮されます。
4. アフターケア
術後は抗生剤の処方や、患部の消毒・ガーゼ交換などが行われます。
再発防止のためにもしっかりとアフターケアを続けることが大切です。
粉瘤の治療はこちら
まとめ
- 粉瘤は絶対に自分で取らず、形成外科での治療を受けましょう。
粉瘤は良性腫瘍であるため放置してもすぐに命に関わることはありませんが、自己判断で潰したり取ったりすることで、思わぬトラブルにつながることがあります。
感染・再発・傷跡など、見た目にも健康にも悪影響が及ぶ可能性が高くなります。
- 粉瘤を安全かつきれいに治すには、袋ごときれいに除去することが不可欠です。
そのためには、形成外科での治療がもっとも信頼できる選択肢です。
「粉瘤は自分で潰さない」これが何よりの鉄則です。
不安がある方は、自己処理を試みる前に、まずは形成外科に相談してみましょう。
早期発見・早期治療が、再発防止と美しい仕上がりへの近道です。