
陰部やデリケートゾーンに「しこり」や「できもの」を感じたとき、多くの方は驚きと同時に強い不安を抱きます。「もしかして性病では?」「癌ではないか?」と心配する方も少なくありません。実際、その正体が「粉瘤(ふんりゅう・アテローム)」であるケースがあります。粉瘤は皮膚の下に袋状の組織ができ、そこに皮脂や角質が蓄積してしこりとなる良性腫瘍です。
粉瘤は生命に直接的な危険を及ぼすものではありませんが、放置すると感染・腫れ・強い痛み・再発といった問題を繰り返すことがあります。特に陰部というデリケートな場所では、歩行や下着の摩擦による痛み、排尿・性交時の支障、さらには心理的ストレスも大きくなります。
今回の記事では、陰部・デリケートゾーンにできる粉瘤の原因や症状、リスク、予防法、そして男女それぞれが何科にかかるべきかを詳しく解説します。最終的には「形成外科での治療」が根治への最短ルートであることをお伝えします。
陰部・デリケートゾーンに粉瘤ができる原因・なぜできる?

粉瘤は「毛穴や皮脂腺の出口が詰まり、角質や皮脂が袋の中に閉じ込められること」で発生します。デリケートゾーンでは以下の要因が重なりやすいです。
※上記は、お尻にできた粉瘤の治療前の写真です
- 摩擦と蒸れ
下着や生理用品の使用により通気性が悪くなり、細菌繁殖や毛穴詰まりが起こりやすい。
- 皮脂腺・アポクリン腺の多さ
陰部には特殊な汗腺(アポクリン腺)が集中しており、皮脂や分泌物が多く出るため、粉瘤ができやすい環境。
- ホルモンバランスの影響
思春期や妊娠、更年期などはホルモン変動で皮脂分泌が増加。特に女性はライフステージごとに発症リスクが変化。
- ムダ毛処理による刺激
カミソリ負けや埋没毛は毛穴の炎症を引き起こし、粉瘤の原因になる。
- 免疫力低下・体質
ストレス・不眠・食生活の乱れが皮膚のターンオーバーを妨げ、老廃物が排出されにくくなる。
粉瘤は「皮膚の代謝の乱れ+局所環境の悪化」によってできやすくなります。
陰部・デリケートゾーンの粉瘤 主な症状

粉瘤は進行度によって症状が変わります。
- 初期(小さな違和感)
数ミリ程度のしこりを触れる。痛みはなく、黒い点が見える場合も。
- 中期(腫れや痛みが出る)
しこりが1〜2センチに成長し、赤みや圧痛が出る。歩行・座位で違和感。
- 炎症期(感染を伴う)
粉瘤が急に腫れ、膿が溜まり強い痛みと熱感を伴う。発熱や下着の汚れも見られる。
- 破裂・膿の排出
自壊して膿や悪臭を伴う内容物が出るが、袋の壁が残るため再発する。
このように、粉瘤は放置すると症状が進行しやすいのが特徴です。特に陰部は摩擦が避けられないため悪化のスピードも早い傾向があります。
粉瘤が陰部・デリケートゾーンにできた場合のリスク・注意点

陰部の粉瘤は次のリスクを伴います。
- 1. 感染・膿瘍化
細菌感染を起こすと腫れが急激に進み、夜も眠れないほどの痛みとなる。
- 2. 再発の可能性
自然に潰れても袋が残れば再発必至。根治には外科的切除が必要。
- 3. 誤診・性病との混同
性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、バルトリン腺嚢胞などと区別が難しい場合もあり、医師による診断が不可欠。
- 4. 生活の質の低下
性交時の痛み・不快感、排尿時の刺激、心理的なストレスが大きい。
- 5. 悪化のリスク
まれに長期放置で粉瘤が悪性腫瘍に変化する例も報告されている。
陰部の粉瘤は「単なるできもの」と軽視せず、早めに専門医を受診することが重要です。
陰部・デリケートゾーンに粉瘤ができないようにする予防法・セルフケア

粉瘤を完全に防ぐのは難しいですが、以下の工夫でリスクを下げられます。
- 清潔を保つ
毎日ぬるま湯で優しく洗浄。石けんは低刺激のものを選ぶ。ゴシゴシ洗いはNG。
- 通気性の良い下着
化学繊維ではなく綿素材。生理中はこまめにナプキンを替える。
- 毛の処理方法に注意
自己処理は埋没毛や炎症の原因。医療脱毛を検討するのも有効。
- 生活習慣改善
脂質・糖質の摂りすぎを避け、ビタミン・タンパク質を摂取。睡眠・ストレス管理も重要。
- 早期発見・早期受診
小さなしこりでも見つけたら専門医に相談することが再発防止につながる。
女性・男性 陰部・デリケートゾーンの粉瘤はそれぞれ何科に受診すべき?

性別 |
内容 |
女性の場合 |
最初は婦人科を受診して性病や婦人科疾患との鑑別を行うケースが多い。
粉瘤と診断されれば、根治治療は形成外科や皮膚科。 |
男性の場合 |
泌尿器科で診てもらうことが多いが、こちらも粉瘤なら形成外科や皮膚科での手術が必要。 |
共通事項 |
形成外科での外科的切除が根治治療。袋ごと取り除くことで再発を防げる。
早期に切除すれば小さな傷で済み、見た目もきれいに治りやすい。 |
粉瘤の治療はこちら
まとめ
- 陰部・デリケートゾーンの粉瘤は、皮脂や角質の蓄積、摩擦や蒸れといった環境要因によって発生します。最初は小さなしこりでも、感染や炎症を起こすと強い痛みや生活の支障を伴い、再発も繰り返します。セルフケアで清潔・通気性・生活習慣を整えることは予防に役立ちますが、完全な予防は困難です。
- 大切なのは「早期に医師の診断を受けること」。婦人科や泌尿器科で性病などの鑑別を行ったうえで、最終的には形成外科での手術が根本治療につながります。「恥ずかしい」といった羞恥心や不安から受診をためらう方も多いですが、形成外科ではプライバシーに配慮した環境で治療が行われるため安心です。
- デリケートゾーンの粉瘤は、 形成外科での外科的治療を受けることが最も確実かつ再発を防ぐ方法 です。気になるしこりを見つけたら、早めに専門医に相談してください。