
「夕方になると目が開けづらくなる」「おでこのシワが深くなってきた」「眠そうだと指摘されることが多い」
もしこのようなお悩みをお持ちであれば、それは単なる目の疲れや老化現象ではなく、「眼瞼下垂(がんけんかすい)」という病気かもしれません。まぶたが重くなる原因は一つではなく、筋肉の衰えであったり、皮膚のたるみであったりと様々です。
治療を検討してインターネットで検索をすると、「眼瞼下垂手術」「二重全切開」「眉下切開」など、似たような手術名がたくさん出てきて混乱してしまうことはありませんか?
「自分にはどの手術が必要なのか?」「二重整形とは何が違うのか?」「一度にすべての悩みを解決できないのか?」
このような疑問を抱くのは当然のことです。実は、これらの手術はアプローチする場所や目的が明確に異なります。
今回の記事では、眼瞼下垂の手術と、よく比較される「二重全切開」「眉下切開」との違い、そしてそれらを同時に行うことができるのかについて、詳しく解説していきます。それぞれの違いを正しく理解することで、あなたにとって最適な治療法を選択する手助けとなれば幸いです。
一般的な眼瞼下垂の手術 切開法

まず初めに、基本となる「眼瞼下垂の手術(切開法)」について解説します。この手術は、下がってしまったまぶたを機能的に引き上げ、目を開きやすくすることを最大の目的としています。
眼瞼下垂手術の仕組みと目的
眼瞼下垂の主な原因は、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)や、その筋肉とまぶたの縁をつなぐ膜(挙筋腱膜)が緩んだり外れたりすることにあります。
切開法による眼瞼下垂手術では、まぶたの皮膚を切開し、緩んでしまった筋肉や腱膜を縫い縮めたり、正しい位置に固定し直したりします(挙筋前転法や腱膜固定術などが一般的です)。これにより、弱い力でもパッチリと目が開くようになります。
二重まぶたとの関係
この手術を行う際、基本的には切開したラインで新しい二重のラインを作ることになります。これは、手術の傷跡を二重の溝に隠して目立たなくするためです。
| 項目 |
内容 |
| 保険診療の場合 |
「目を開く機能の回復」が最優先されます。そのため、二重の幅や形などの審美的な(見た目の)細かな希望は通りにくい傾向があります。あくまで「病気の治療」としての手術です。 |
| 自由診療の場合 |
機能の改善に加え、「幅の広い平行二重にしたい」「華やかな目にしたい」といった美容的なデザインの希望も叶えることができます。 |
メリットとデメリット
メリット:
- 目を開ける力が劇的に改善し、視界が広がる。
- おでこの筋肉を使わずに目を開けられるようになるため、額のシワや頭痛、肩こりが改善する。
- 後戻り(再発)が少ない。
デメリット:
- 切開するため、術後の腫れや内出血などのダウンタイムが比較的長い(2週間〜1ヶ月程度)。
- 一度切開すると、元の状態に完全に戻すことは難しい。
二重全切開とは?眼瞼下垂手術との違い

次に、美容整形でよく耳にする「二重全切開(ふたえぜんせっかい)」についてです。眼瞼下垂手術と混同されやすいですが、アプローチする目的が異なります。
手術の目的の違い
「二重全切開」は、その名の通り「半永久的な二重のラインを作ること」が主目的の手術です。
二重全切開とは?
まぶたの皮膚を切開し、皮下脂肪や眼輪筋を処理した後、皮膚と瞼板(まぶたの芯となる組織)などを癒着させることで、くっきりとした取れない二重を作ります。
眼瞼下垂手術とは?
まぶたを持ち上げる「筋肉(機能)」を修復する手術です。
つまり、二重全切開だけを行っても、目の開き自体(黒目の見える範囲)は変わりません。もし、眼瞼下垂の症状(筋肉の弱り)がある人が、筋肉の処理をせずに二重全切開だけを行った場合、二重の線はできますが、目は眠そうなまま、あるいは二重の幅が広くなりすぎて「ハム目」と呼ばれる不自然な状態になるリスクがあります。
| 項目 |
内容 |
| 二重全切開が向いている人 |
目の開きは正常(黒目が8割以上見えている)。
まぶたが厚く、埋没法ではすぐに取れてしまう。
とにかく取れない二重を作りたい。 |
| 眼瞼下垂手術が向いている人 |
目を開けるのが重い、疲れる。
黒目の上半分がまぶたで隠れている。
二重にしたいだけでなく、目をパッチリ大きくしたい。 |
眼瞼下垂手術と二重全切開の同時手術が可能かどうか

結論から申し上げますと、眼瞼下垂手術と二重全切開の同時手術は可能です。というより、眼瞼下垂手術(切開法)を行う場合、実質的には二重全切開の工程が含まれていることがほとんどです。
同時手術(併用)のメリット
眼瞼下垂の手術を行う際、皮膚を切開して内部の筋肉を処理します。最後に傷を縫合する際、皮膚を瞼板などに固定すれば、それがそのまま「切開法による二重」になります。
つまり、「目の開きを良くする(眼瞼下垂手術)」+「希望の二重ラインを作る(二重切開)」を一度の手術で行うことが、美容外科領域ではスタンダードな治療法となっています。
注意点:保険診療と自由診療の壁
ここで注意が必要なのは、保険適用で手術を受ける場合です。
- 保険診療で手術を受ける場合:
「眼瞼下垂症手術」として行われます。二重のラインは作りますが、それはあくまで「傷を隠すため」や「まつ毛が目に入らないようにするため」の処置です。「幅広の二重にしたい」「末広型にしたい」といった美容的なリクエストは、保険のルール上、基本的に受け入れられません。
- 美容目的(自由診療)の場合:
「挙筋前転法(眼瞼下垂の手術)+二重全切開」として、目の開きと二重のデザインの両方を追求できます。
したがって、「眼瞼下垂も治したいし、理想の二重幅にもこだわりたい」という方は、自由診療での同時手術が最も満足度の高い選択肢となるでしょう。
眉下切開とは?眼瞼下垂手術との違い

続いて、「眉下切開(眉下リフト)」について解説します。特にまぶたの「たるみ」が気になる世代(40代〜60代)や、元々まぶたが分厚い10代〜30代の方に注目されている手術です。
眉下切開とは?
眉毛のすぐ下のラインに沿って皮膚を切開し、余分な皮膚や脂肪を切り取る手術です。
眼瞼下垂手術との最大の違いは、「どこを引き上げるか」です。
- 眼瞼下垂手術:
まぶたの「縁(ふち)」を持ち上げます。カーテンを開けるように、まぶたそのものを上にスライドさせるイメージです。
- 眉下切開:
まぶたの「皮膚(たるみ)」を引き上げます。垂れ下がってきた屋根(皮膚)を切り取って、視界を確保するイメージです。
眉下切開が適しているケース
眉下切開は、筋肉(眼瞼挙筋)には触れません。あくまで皮膚のたるみを取る手術です。そのため、以下のような方に適しています。
- 皮膚のたるみが原因で見えにくい人:
目の開き自体(筋肉の力)は正常なのに、加齢などで皮膚が伸びて覆いかぶさっている「偽性眼瞼下垂(ぎせいがんけんかすい)」の方。
- 元の目の形を変えたくない人:
二重のライン付近を触らないため、ご自身の元々の目元(一重や奥二重)の印象を大きく変えずに、若々しい目元に戻せます。
- まぶたが厚い人:
二重のラインで皮膚を切除すると、眉毛に近い分厚い皮膚が目の際に降りてきてしまい、ボッテリとした不自然な目になることがあります。眉下切開なら、厚い皮膚そのものを除去できるため、スッキリとした目元になります。
眼瞼下垂手術と眉下切開の同時手術が可能かどうか

「目の開きも悪いし、皮膚もたるんでいる。両方一気に治したい」という場合、眼瞼下垂手術と眉下切開を同時に行うことは可能なのでしょうか?
技術的には可能だが、推奨されないことが多い
医師やクリニックの方針にもよりますが、多くの専門医は「同時手術はあまり推奨しない(時期をずらすことを勧める)」傾向にあります。これには明確な理由があります。
同時手術を避けるべき理由
- 仕上がりの予測が困難になる:
眉下切開で皮膚を引き上げると、まぶたの環境が大きく変わります。その状態で同時に眼瞼下垂の手術(二重の作成や筋肉の調整)を行うと、最終的に二重がどの位置に来るのか、皮膚がどれくらい被るのかの微調整が非常に難しくなります。
- 目が閉じなくなるリスク(兎眼):
上から皮膚を引き上げ(眉下切開)、下からもまぶたを引き上げる(眼瞼下垂手術)と、皮膚の切除量が過多になり、目が完全に閉じなくなる「兎眼(とがん)」のリスクが高まります。
- ダウンタイムの悪化:
まぶたの上下で切開を行うため、リンパの流れが遮断され、強烈な腫れ(”ボクサーのような目”と表現されることもあります)が長期間続く可能性があります。
推奨される治療の流れ
一般的には、以下の手順で段階的に行うことが理想的とされています。
- まず「眉下切開」を行う
たるんでいる重たい皮膚を取り除きます。これだけでまぶたが軽くなり、目の開きが改善するケースも多々あります。
- 経過を見て「眼瞼下垂手術(二重形成)」を行う
3ヶ月〜半年ほど空けて腫れが引いた後、まだ目の開きが悪い場合や、二重をくっきりさせたい場合に、改めて眼瞼下垂手術や二重埋没法・切開法を行います。
このように段階を踏むことで、皮膚の余り具合や二重の幅を正確に調整でき、より自然で美しい仕上がりを目指すことができます。
まとめ

- 眼瞼下垂手術(切開法):
「筋肉」を治して目の開きを良くする手術。機能改善がメイン。
二重全切開:
「二重のライン」を作る手術。目の開き自体は変わらない。
眉下切開:
「皮膚のたるみ」を取る手術。厚ぼったいまぶたをスッキリさせるのに最適。
同時手術について:
眼瞼下垂 + 二重全切開: 非常に相性が良く、一般的。理想の目元を作るなら自由診療でのセットがおすすめ。
眼瞼下垂 + 眉下切開: 同時はリスクが高いため、基本的には時期をずらして別々に行うのがベター。
- 「まぶたが重い」という症状一つをとっても、その原因が「筋肉の弱り」なのか、「皮膚のたるみ」なのか、あるいは「その両方」なのかによって、選ぶべき手術は全く異なります。
- 誤った手術法を選んでしまうと、「手術をしたのに目が重いまま」「不自然な目になってしまった」という結果になりかねません。
あなたにとってのベストな選択をするために、まずは「自分のまぶたが重い原因」を正しく知ることから始めましょう。
- 専門の医師によるカウンセリングでは、実際にまぶたの状態をシミュレーションしながら、筋肉と皮膚どちらにアプローチすべきかを診断してもらえます。自己判断で悩まず、まずは一度、形成外科や美容外科の専門医に相談に行ってみてはいかがでしょうか。その一歩が、明るくクリアな視界と、自信の持てる目元への近道となるはずです。
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