
「乳首がピリピリ痛む」「かさぶたのように皮がむけている」「授乳のたびにヒリヒリして辛い」。このような乳頭・乳首のトラブルに悩まされている女性は、少なくありません。
乳首はとても繊細な部位です。乾燥や摩擦などの物理的刺激はもちろん、授乳中のダメージ、アレルギー反応、ホルモンの変動、さらには皮膚疾患や乳がんの前兆まで、亀裂やひび割れの背景にはさまざまな原因が潜んでいます。
一時的な傷であれば自然に治ることもありますが、繰り返す・痛みが強い・治らないといった場合は、放置せずに適切なケアと受診が必要です。
今回の記事では、乳頭・乳首が切れる原因や自宅でできる対策、考えられる疾患、医療機関での検査・治療までを、わかりやすく解説します。ご自身の体と丁寧に向き合い、「乳首の亀裂を治したい」という気持ちを叶える一歩としてお読みください。
乳頭・乳首の亀裂・切れる症状

乳頭や乳首の亀裂・切れる症状とは?
皮膚の表面に細かなひび割れや切れ目が生じ、ヒリヒリした痛みや出血、かさぶたなどを伴う状態を指します。特に授乳中の方や乾燥しやすい季節には発症しやすく、衣類との摩擦や外的刺激によって悪化することがあります。
症状としては、以下のようなものが見られます。
- ヒリヒリ・ピリピリとした痛み
- 乳首の表面に細かいひびや切れ目がある
- 赤みや軽度の腫れ、熱感
- 出血またはかさぶたの形成
- 乾燥して皮がむける
- 授乳時の強い痛みや違和感
これらの症状がある場合は、早めのケアや皮膚科や形成外科・乳腺外科などの受診を検討することが大切です。
乳頭・乳首が切れる主な原因

乳首の皮膚はとても薄く、ちょっとした刺激で簡単に傷ついてしまいます。以下に、特に多く見られる原因を5つのカテゴリに分けてご紹介します。
1. 外部刺激(摩擦・乾燥・衣類)
- 下着や洋服との摩擦:合わないブラジャーや硬い生地が乳首を刺激し、ひび割れを引き起こします。
- 乾燥によるひび割れ:秋冬やエアコン使用時に皮膚が乾燥し、表面がひび割れて切れるケース。
- 洗剤・柔軟剤の成分:衣類に残った化学物質が肌に触れて、接触性皮膚炎を起こすこともあります。
2. 授乳による物理的ダメージ
- 赤ちゃんの吸う力が強い、または姿勢が不適切だと、乳頭の皮膚が引き裂かれるように負担がかかります。
- 初産婦の方は特に、乳首が慣れるまでトラブルが起きやすいです。
- 授乳後の放置:母乳の水分が蒸発する際に肌の水分も奪われ、乾燥・ひび割れを招きます。
3. ホルモンバランスの影響
- 月経前後や妊娠中・授乳中・更年期などは、女性ホルモンの影響で皮膚のバリア機能が低下します。
- 肌が敏感になり、いつもと同じ刺激でも亀裂が起こりやすくなります。
4. アレルギーや皮膚トラブル
- アレルゲンによる接触性皮膚炎(例:化粧品、クリーム、シャンプーなど)。
- アトピー性皮膚炎のある方は、バリア機能の弱さから亀裂ができやすい傾向があります。
5. 不適切なスキンケア
- 石鹸の洗いすぎ、アルコール系のボディローションの使用は、皮膚を乾燥させ、逆にひび割れの原因になります。
- 保湿剤の選択ミス(香料や保存料が刺激になる場合)にも注意が必要です。
乳頭の亀裂が見つかった時のセルフケア・予防法

症状が軽度なうちは、自宅でのケアで改善できることもあります。以下に、実践しやすく効果の高い対策を紹介します。
- 摩擦・刺激を避ける
・ブラジャーは綿100%やシームレス素材のものを選び、できるだけ肌に優しいものに。
・自宅ではノーブラで過ごす時間をつくり、通気性を確保しましょう。
- 保湿ケアの徹底
・医療用のラノリン軟膏(ピュアレーン等)やワセリンが推奨されます。
・入浴後・授乳後などの水分が逃げやすいタイミングで、こまめに塗布してください。
- 授乳の工夫
・授乳クッションの活用や赤ちゃんの体勢を見直して、乳首にかかる圧を軽減。
・授乳後は、母乳を軽く拭き取った後、保湿剤でカバーするのが理想です。
- 衛生管理と洗浄の見直し
・入浴時は石鹸の使いすぎを避ける。泡で優しく洗うだけでOKです。
・洗い流した後はタオルでこすらず、押さえるように水分を取ること。
- 食事と睡眠で皮膚の再生を助ける
・ビタミンA(皮膚の修復)・ビタミンE(血行促進)・亜鉛(免疫強化)などの栄養素を含む食事を意識。
・睡眠不足やストレスは皮膚の再生に悪影響を与えるため、生活習慣の見直しも大切です。
乳頭の亀裂で疑われる疾患

乳首が頻繁に切れる、慢性的に治らない、かゆみやジュクジュクがある……そんなときは、以下の疾患が隠れている可能性があります。
1. 接触性皮膚炎
接触性皮膚炎とは?
肌が特定の物質に触れることで生じる炎症です。洗剤や化粧品、衣類の素材、金属などが原因となりやすく、赤み、かゆみ、水ぶくれなどの症状が現れます。原因物質との接触を避け、必要に応じてステロイド外用薬などで治療します。
項目 |
内容 |
原因 |
洗剤・ボディソープ・スキンケア製品など |
症状 |
赤み、かゆみ、乾燥、細かいひび割れ |
対処 |
原因の除去とステロイド外用薬の使用 |
2. アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは?
アレルギー体質の方に多くみられる慢性的な皮膚炎です。皮膚の乾燥やバリア機能の低下によってかゆみや炎症が生じ、悪化と軽快を繰り返します。保湿剤によるスキンケアと、炎症を抑える薬の使用が基本的な治療となります。
項目 |
内容 |
原因 |
体質・乾燥・アレルゲンなど複合的要因 |
症状 |
左右対称のかゆみ・湿疹・皮膚の肥厚 |
対処 |
保湿・抗炎症剤の塗布・生活習慣改善 |
3. カンジダ皮膚炎(乳頭カンジダ)
カンジダ皮膚炎(乳頭カンジダ)とは?
真菌(カビ)の一種であるカンジダが皮膚に感染して起こります。特に湿気がこもりやすい部位に発生しやすく、乳頭・乳輪にもみられることがあります。赤みやかゆみ、皮むけが見られ、抗真菌薬による治療が行われます。
項目 |
内容 |
原因 |
授乳中のママによく見られ、赤ちゃんの口腔内カンジダが感染源となることも。 |
症状 |
ピリピリとした痛み、乳頭の赤み、白っぽい膜 |
対処 |
抗真菌薬の塗布や内服。母子同時治療が基本。 |
4. 乳頭湿疹(乳輪湿疹)
乳頭湿疹(乳輪湿疹)とは?
乳頭や乳輪にかゆみや赤み、皮むけなどが出る皮膚炎です。授乳による摩擦や、肌の乾燥、アレルギー反応などが原因となることがあります。症状が軽い場合は保湿剤や外用薬で改善が見込めますが、長引く場合は専門医の診察が必要です。
項目 |
内容 |
症状 |
授乳や皮膚トラブルにより乳頭周囲にジュクジュク・皮むけ・かゆみなどを伴います。 |
リスク |
長引くと色素沈着や二次感染のリスクあり。 |
5. パジェット病(乳頭の乳がん)
パジェット病(乳頭の乳がん)とは?
乳頭や乳輪に湿疹のような症状が現れる乳がんの一種です。かゆみやただれ、かさぶたなどが特徴ですが、湿疹と区別がつきにくいため注意が必要です。診断には生検(皮膚の組織検査)が必要で、早期発見・早期治療が重要です。
項目 |
内容 |
原因 |
非常にまれですが、乳頭部に現れる特殊な乳がんの一種。 |
症状 |
片側だけに持続するびらん・かゆみ・かさぶた状の変化 |
リスク |
長引く・再発する・改善しない亀裂は乳腺外科で精査を。 |
乳頭・乳首が切れている場合の検査・診察・治療

市販薬やセルフケアで改善が見られない場合は、医療機関の受診をおすすめします。
- 主な症状と受診の目安
・皮膚のかゆみ・炎症
・授乳中の痛み・感染
・長引く乳頭の変化・しこり
- 検査内容
・問診・視診:症状の経過、生活習慣、授乳状況を丁寧に確認
・真菌検査:皮膚の一部を採取してカンジダなどの有無を調べます
・乳腺エコー・マンモグラフィー:乳がんの可能性がある場合に実施
- 治療法
・外用薬:ステロイド軟膏、保湿剤、抗真菌剤などを使い分け
・授乳指導:助産師による適切な乳頭ケアのアドバイス
・薬物療法:炎症が強い場合や感染が広がっているときには内服薬を使用
・精密検査・手術:パジェット病などが疑われた場合は組織検査や手術も検討
施術事例【陥没乳頭のため乳頭が亀裂していた事例】

陥没乳頭とは?
乳頭(乳首)が皮膚の内側に引き込まれている状態を指します。生まれつきの場合もあれば、授乳や炎症、加齢などが原因で後天的に陥没することもあります。軽度の場合は手で引き出せますが、重度になると常に埋もれた状態となり、日常生活や授乳、衛生面に支障をきたすことがあります。
陥没乳頭の状態が続くと、乳頭周囲の皮膚が不衛生になりやすく、通気性も悪いため、皮膚がふやけて亀裂が生じることがあります。特に衣類との摩擦や乾燥が重なると、裂けるような痛みやしみるような違和感が生じやすくなります。
乳頭は皮膚が薄くてデリケートな部位のため、一度亀裂ができると、繰り返し刺激を受けることで治癒が遅くなります。また、授乳中であればさらに悪化しやすく、炎症や感染のリスクも高まります。通常のスキンケアでは対応が難しいケースもあります。
陥没乳頭を根本的に改善することで、乳頭の通気性や清潔さが保たれるようになり、亀裂や痛みといった症状も自然と治まっていきます。特に手術によって形状を整えることで、亀裂が再発しにくくなり、日常生活の快適さが大きく向上します。
Dr.三沢
陥没乳頭のため、乳頭に亀裂があり、痛みもありました。一旦、乳頭が亀裂すると、傷が治りにくい傾向にあります。陥没乳頭を改善したことで、乳頭の亀裂も治りました。
よくあるご質問
乳頭・乳首の切れが見つかった場合のすぐにできる対処法は?
まずは刺激を避けて患部を清潔に保つことが大切です。石けんの使用は控え、ぬるま湯でやさしく洗い流した後、清潔なタオルで水分を押さえるようにふき取ります。ワセリンや亀裂用の保湿クリームを薄く塗り、下着や衣類との摩擦を減らすようにしましょう。痛みや出血が続く場合は、早めに皮膚科や形成外科・乳腺外来を受診してください。
妊娠してないのに乳頭の亀裂が見つかるのは乳がんの可能性がありますか?
乳頭の亀裂だけで乳がんと診断されることはまれですが、乳がんの一種である「パジェット病」では乳頭に湿疹のような症状やかさぶた、亀裂が現れることがあります。左右差があったり、治療しても改善しない、乳頭から血が混じる分泌液が出るなどの症状がある場合は、乳腺外科の受診をおすすめします。
乳頭亀裂を早く治す方法はありますか?
傷口を清潔に保ち、保湿を継続することが回復の基本です。ワセリンや亀裂専用のクリームで乾燥や摩擦を防ぎましょう。また、下着の素材を柔らかく通気性のよいものに変えるのも効果的です。傷が深い、痛みが強い、膿んでいるような場合には細菌感染の可能性があるため、皮膚科や乳腺外科で適切な処置を受けましょう。
授乳による傷はどれくらいで治りますか?治し方はありますか?
個人差はありますが、軽度な傷であれば数日から1週間ほどで自然に治癒することが多いです。ただし授乳のたびに傷が悪化する場合は、授乳姿勢や赤ちゃんの吸い付き方に問題があるかもしれません。ラノリンクリームなどの保護クリームの使用や、搾乳による一時的な休乳も効果的です。痛みや出血が強い場合は、母乳外来など専門機関への相談をおすすめします。
まとめ
- 乳頭や乳首の亀裂は、女性にとってとても身近でつらいトラブルの一つです。乾燥・摩擦・授乳などの外的要因から、アレルギーや感染症、まれには乳がんの初期症状まで、その背景には多様な原因が存在します。
- 「少し痛いけど我慢できる」「赤ちゃんがいるからしょうがない」と放置してしまうと、悪化したり、再発を繰り返したりする可能性があります。まずはセルフケアから始め、異常があれば早めに医療機関を受診することが、症状の早期改善と再発予防のカギです。
- 乳頭の亀裂をしっかり治したい方は、皮膚科や形成外科、乳腺外科での相談をおすすめします。大切な体のサインを見逃さず、安心して過ごせる毎日を取り戻しましょう。