
乳首が内側に引っ込んで出てこない「陥没乳頭(かんぼつにゅうとう)」は、見た目のコンプレックスとして悩む方が多い症状のひとつです。
ただし、単なる“見た目の問題”ではなく、授乳時に赤ちゃんが吸いづらい・乳腺炎を起こしやすい・不衛生になりやすいなど、身体的なトラブルを引き起こすこともあります。
実は陥没乳頭には「軽度」「中等度」「重度」といった3つの段階(程度・度合い)があり、それぞれで原因や治療法が異なります。
さらに、生まれつきの「先天性」か、あとから発生する「後天性」かによっても対応が変わってくるのです。
今回の記事では、陥没乳頭の程度別の特徴・原因・放置によるリスク・治療法をわかりやすくまとめました。
「自分はどの程度なのか」「治療を受けるべきか悩んでいる」という方は、ぜひ最後までお読みください。
陥没乳頭の主な特徴

陥没乳頭とは?
乳首が常に皮膚の中に埋もれている、または平らに見える状態のことをいいます。
外見上はほとんど目立たないこともありますが、乳管や皮膚の構造に問題がある場合も多く、根本的な原因を把握しておくことが大切です。
陥没乳頭の特徴一覧
- 乳首が内側に引き込まれている
- 指で引っ張ると出るが、すぐに戻ってしまう
- 片側だけ陥没している場合もある
- 白いカスや分泌物が溜まりやすい
- 匂い・炎症・痛みを伴う場合がある
- 授乳時に乳首が出ず、吸われにくい
陥没乳頭と混同しやすい状態
- 扁平乳頭:完全に引っ込んではおらず、平らな状態。授乳には支障が少ない。
- 乳頭陥凹(にゅうとうかんおう):乳頭の先端が一部くぼんでいる状態。軽度の前段階としてみられる。
これらは見た目が似ていますが、改善法が異なるため、医師による正確な診断が不可欠です。
陥没乳頭の程度・度合い(軽度・中等度・重度)

陥没乳頭は、乳頭の引き込みの深さや癒着の強さによって3段階に分類されます。
【軽度(仮性陥没乳頭)】
軽度は「仮性」とも呼ばれ、指で軽く押すと乳首がすぐに外に出てくるタイプです。
乳管が比較的柔軟で、軽いマッサージや吸引器で改善する可能性が高いです。
- 授乳:比較的可能
- 炎症・痛み:ほとんどなし
- セルフケア:有効なケースが多い
【中等度】
中等度では、乳管の癒着がやや強く、指でつまんでも出にくい、もしくは出てもすぐ戻るのが特徴です。
授乳時にトラブルが多く、白い分泌物や炎症を繰り返す人もいます。
- 授乳:困難なケースがある
- 炎症・臭い:起こりやすい
- 改善法:吸引では不十分。医療的処置が必要になることも
【重度(真性陥没乳頭)】
重度では、乳管・皮膚組織の癒着が強く、どんなに刺激を与えても乳首が出ません。
乳頭形成手術(陥没乳頭手術)でなければ改善は難しいタイプです。
- 授乳:不可能に近い
- 炎症・乳腺炎:発生しやすい
- 治療:形成外科での外科的処置が必要
Dr.三沢
軽度(仮性陥没乳頭)・重度(真性陥没乳頭)について詳しくは、以下の記事もご覧ください。
【軽度(仮性)の陥没乳頭でも手術した方が良い?】授乳について/自宅での治し方も解説
【重度の陥没乳頭の治し方・手術治療】真性の症状・原因・リスクと授乳困難な場合の保険適用
陥没乳頭の原因(先天性・後天性)

【先天性の原因】
生まれつき乳管が短い、または皮下の結合組織が乳頭を内側に引き込んでいる状態です。
乳首の発達過程で乳管が伸びきらずに固まることが原因で、思春期や授乳期に気づくことが多くなります。
このタイプは両側に起こりやすく、軽度〜中等度が中心です。
【後天性の原因】
もともと正常だった乳首が、炎症や外傷によって引き込まれるタイプです。
以下のような後天的な要因が関係しています。
- 授乳後の乳腺炎・乳管炎
炎症による瘢痕(はんこん)で乳管が縮み、乳首が引っ込む。
- 過度な刺激・外傷
強い圧迫や摩擦、ピアス・手術跡などで組織が変形。
- 加齢やホルモンの影響
皮膚の弾力が低下し、乳頭が内側へ。
- 乳がんなどの疾患
腫瘍が乳頭を引っ張り、片側のみ陥没することがある。
特に「急に片側だけ陥没した」「痛みや分泌物がある」という場合は、乳がんの可能性を否定するためにも、早期の受診が必要です。
陥没乳首のまま放置して困ること・影響

- 【1】授乳トラブル
乳首が吸いにくく、母乳がうまく出ない・詰まりやすいなどのトラブルが発生します。
結果として、乳腺炎・乳頭亀裂・乳管炎などを繰り返す原因になることもあります。
- 【2】炎症・臭い・分泌物
乳頭が内側にあると通気性が悪く、皮脂や角質が溜まりやすくなります。
白いカスのような汚れや臭い、かゆみなどを感じたら、雑菌感染が起きているサインです。
- 【3】見た目・心理的なコンプレックス
見た目の違いから「温泉やパートナーに見せたくない」と感じる方も多く、心理的な負担を抱えるケースがあります。
中には、パートナーに相談できず自信を失ってしまう人もいます。
- 【4】病気のサインを見逃す
乳頭が内側に隠れていることで、分泌物やしこりなど、乳がんの初期サインを発見しにくくなります。
とくに後天的な片側陥没は「病的サイン」のことがあるため、必ず医療機関で検査を受けましょう。
陥没乳頭の治療はこんな方におすすめ

- 乳首がつまんでも出ない、またはすぐ戻る
- 授乳時に赤ちゃんが吸えず困った経験がある
- 白いカスや臭いが気になる
- パートナーとの関係で見た目が気になる
- 片側だけ急に引っ込んできた
これらに当てはまる方は、医療機関での治療による改善が期待できます。
特に「中等度」「重度」「後天性」の場合は、セルフケアでは限界があり、医師の判断が重要です。
陥没乳頭の程度別の治療法
一般的な治療

エムズの治療法

- 傷跡が目立たない
- リスクが低い
- 戻る可能性が少ない
【軽度(仮性)】セルフケア・吸引器で改善可能
治し方 |
内容 |
乳頭吸引器
(ニップルサッカー) |
毎日、数分使用して乳頭を外へ誘導。 |
温め+マッサージ |
入浴後に皮膚を柔らかくしてから、軽く引き出す。 |
1〜2か月続けて改善するケースもあります。ただし、強く引っ張りすぎると乳管を傷つける恐れがあるため注意が必要です。
【中等度】手術で根本改善+自然な形を保つ
中等度では、乳管や皮膚の癒着が強く、吸引器ではもとに戻りやすいです。
そのため、「乳頭形成術(陥没乳頭手術)」が有効です。
代表的な術式には次の2つがあります。
治療法 |
内容 |
1. 乳管温存法 |
乳管を残したまま、内部の癒着を解除し乳首を出す方法。
授乳を希望する若い女性に多く選ばれます。 |
2. 乳管切離法 |
乳管を一部切離して、形を安定させる方法。
再発が少なく、美しい仕上がりを重視する方に向いています。 |
術後はテープ固定を1週間前後行い、抜糸も1週間程度で完了。
日常生活への影響は少なく、傷跡もほとんど目立ちません。
【重度(真性)】形成外科での外科的処置が必要
重度では、乳管の癒着が強く、手術以外の方法では改善できません。
形成外科では、乳頭内部を丁寧に剥離して立体構造を再構築します。
再陥没を防ぐために、縫合糸で乳頭を支える「スパイラル固定法」などの術式が採用されることもあります。
Dr.三沢
重要なのは、医師の技術力と審美眼。
「再発しにくい構造」「自然な乳首の高さ・太さ・バランス」を考慮してデザインできるかがポイントです。
手術後の経過・注意点
- 手術直後は軽い腫れや赤みが出る
- シャワーは翌日から可能
- 1〜2週間でほぼ日常生活に復帰
- 一時的に感覚の鈍さを感じることがある
- 再発防止のため、強い刺激を避ける
医師の指示に従い、テープ固定をしっかり行うことで美しい仕上がりを維持できます。
横浜の陥没乳頭治療はこちら
よくあるご質問
陥没乳頭は先天性の場合、遺伝による原因が大きいですか?
先天性の陥没乳頭は、生まれつき乳管や乳頭を支える組織が短かったり、発達が未熟であることによって起こります。このような構造的な特徴には遺伝的要素が関与していると考えられており、親や姉妹など血縁者に同じ症状がみられるケースも少なくありません。
ただし、遺伝の影響がすべてではなく、胎児期や思春期のホルモン分泌のバランス、乳腺や皮下組織の発達の仕方なども関係します。つまり、「遺伝しやすい体質」がある一方で、発症の程度や片側・両側の違いなどは個人差が大きいのです。
軽度の場合は思春期や授乳をきっかけに自然に改善することもありますが、遺伝傾向が強い場合は成長後も改善しないことが多く、医療的なアプローチが必要になります。
後天性の軽度・中等度の陥没乳頭であっても治療した方が良いですか?
後天性の陥没乳頭は、もともと正常だった乳首が、外的刺激や炎症、加齢、授乳による変化などで次第に引き込まれていく状態を指します。軽度であっても、「清潔が保ちにくくなる」「乳頭分泌がたまりやすい」「臭いや炎症を繰り返す」など、衛生面のトラブルが起こりやすくなる点に注意が必要です。
また、見た目のコンプレックスや授乳時に赤ちゃんが吸いづらくなるなど、日常生活に影響を与えることもあります。そのため、「軽度だから放置して大丈夫」とは言い切れません。特に中等度以上では、癒着や乳管の短縮が進む前に、専門医による診察を受けておくと安心です。
近年では、傷跡が目立たない形成外科的な手術や、軽度の場合には吸引器具などを用いた保存的な治療も選択できます。早めに相談することで、治療の選択肢が広がり、より自然な形に整えやすくなります。
手術後の乳頭の感覚は変わりますか?
手術後は一時的に乳頭の感覚が鈍くなる場合があります。これは、手術時に細い神経が軽度に刺激を受けたり、むくみや炎症によって一時的に感覚が低下するためです。しかし、多くの場合は数週間から数ヶ月で回復します。
形成外科の手術では、乳頭の神経や血流をできる限り温存するようにデザインされており、感覚が永久的に失われることはほとんどありません。術後のケアとして、傷口を清潔に保ち、強い刺激を避けることが重要です。
特に授乳希望のある方の場合、医師が乳管を温存する術式を選ぶことで感覚や母乳分泌機能を保つことが可能です。手術の目的や将来の希望(授乳の有無、美容面の改善など)をあらかじめ伝えておくと、より適切な治療方法を提案してもらえます。
治療後に再び陥没する可能性はありますか?
陥没乳頭の再発は、治療方法や乳頭内部の状態によって異なります。特に、重度の陥没や乳管が強く短縮しているタイプでは、再発のリスクがやや高いとされています。乳管を温存する術式を選んだ場合、将来的に授乳機能を残せるメリットがある一方で、再び軽度の陥没が起こる可能性があります。
再発を防ぐためには、手術時に乳頭内部の癒着をしっかり解除し、支えとなる組織を整えることが大切です。さらに、術後に乳頭保護器を一定期間装着し、形を安定させることで再陥没のリスクを最小限に抑えることができます。
また、術後すぐに強い圧迫や摩擦を与えないこと、ブラジャーの圧力を避けることも大切です。再発が起こった場合でも、再手術で修正可能なケースが多く、放置するよりも早めに形成外科で相談することで自然な形状を維持しやすくなります。
まとめ
- 陥没乳頭は「軽度・中等度・重度」という程度の違いや、「先天性・後天性」という原因の違いによって、対処法が大きく変わります。
・軽度:セルフケアや吸引で改善可能
・中等度:乳管温存法などの手術が有効
・重度:外科的再建で根本改善が必要
また、後天性の陥没乳頭では乳腺炎や乳がんが隠れている可能性もあるため、片側のみ・突然の変化には要注意です。
- 見た目の悩みを抱え続けるよりも、医療機関で適切な診断を受け、自分に合った治療を選択することで、「授乳のしやすさ」「清潔さ」「見た目の自信」のすべてを取り戻すことができます。
- 陥没乳頭の程度や原因を理解し、専門医のサポートを受けて、心身ともに前向きな一歩を踏み出しましょう。