
「ピコレーザーを受けたのに、思ったほどシミが薄くならない」「回数を重ねているのに、シミが残っている気がする」
こうした疑問や不安を感じている方は、決して少なくありません。ピコレーザーは近年、美容皮膚科で急速に普及し、“最新のシミ治療”“肌に優しいレーザー”として紹介されることが多い治療法です。そのため、「ピコレーザーなら必ずシミが消える」と期待して施術を受ける方も多いのが実情です。
しかし、実際の診療現場では、ピコレーザーだけでは十分な効果が得られないケースも存在します。その一方で、長年シミ治療の中心を担ってきたQスイッチヤグレーザーは、現在でも非常に重要な治療選択肢です。
大切なのは、新しいか古いかではなく、「今あるシミに合っているかどうか」です。
今回の記事では、ピコレーザーの特徴と限界、シミが消えにくい理由を整理したうえで、Qスイッチヤグレーザーとの違いを分かりやすく比較し、納得して治療を選べるよう詳しく解説します。
ピコレーザーとは?その効果と副作用

ピコレーザーとは?
レーザーの照射時間が「ピコ秒(1兆分の1秒)」という非常に短い時間であることが最大の特徴です。従来のナノ秒レーザーと比べ、熱の発生が抑えられ、衝撃波によってメラニン色素を細かく砕く仕組みになっています。
この特性により、周囲の正常な皮膚へのダメージが少なく、炎症後色素沈着のリスクが抑えられる点が大きなメリットです。そのため、肌が敏感な方や、肝斑を合併している方にも比較的使いやすいレーザーとして注目されています。
ピコレーザーで期待できる主な効果
- 薄いシミやそばかすの改善
- くすみや色ムラの改善
- 肝斑への低刺激治療(ピコトーニング)
- 肌のハリ・キメの改善
特にピコトーニングは、低出力で顔全体に均一照射することで、シミを少しずつ薄くしながら肌全体のトーンアップを目指す治療です。
一方で、副作用がまったくないわけではありません。施術後に一時的な赤みやヒリヒリ感が出ることがあり、体質によっては軽いかさぶたや点状出血が生じる場合もあります。ただし、多くは数日以内に落ち着き、ダウンタイムは短い傾向にあります。
ピコレーザーでシミが消えない原因と問題点

ピコレーザーを受けてもシミが思うように消えない場合、施術が失敗しているわけではなく、治療の「適応」が合っていないケースが多く見られます。
シミには、老人性色素斑、そばかす、肝斑、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)など、さまざまな種類があります。それぞれ色素の位置や深さが異なるため、同じレーザーで同じ効果が出るわけではありません。
ピコレーザーは、色素を細かく砕く一方で、1回あたりの破壊力は比較的マイルドです。そのため、以下のようなケースでは効果を感じにくいことがあります。
- 色が濃く、境界がはっきりしたシミ
- 真皮の深い層にメラニンが存在するシミ
- 少ない回数・低出力での治療を続けている場合
また、「シミだと思っていたものが実は肝斑だった」「複数のシミが混在していた」というケースも珍しくありません。この場合、ピコレーザーだけでは十分な改善が得られず、治療計画の見直しが必要になります。
ピコレーザーでシミが消えない原因は、レーザーそのものではなく、診断と治療選択のミスマッチにあることが多いのです。
Qスイッチヤグレーザーとは?その効果と副作用

Qスイッチヤグレーザーとは?
長年にわたりシミ治療の中心的存在として使用されてきたレーザーです。高いエネルギーを瞬間的に照射し、メラニン色素を一気に破壊する点が特徴です。このため、濃くはっきりしたシミや、長年残っているシミに対して、1回の治療で明確な反応が出やすいという強みがあります。
Qスイッチヤグレーザーが特に適しているケース
- 老人性色素斑(いわゆる加齢によるシミ)
- 境界が明瞭なシミ
- ADM
- 刺青除去
一方で、照射後に一時的に色素沈着が起こる可能性があります。そのため、施術後は紫外線対策や保湿など、アフターケアが非常に重要になります。ダウンタイムは1〜2週間程度見込む必要があり、予定を考慮した治療計画が求められます。
ピコレーザーとQスイッチヤグレーザーの違い・比較

両者の違いを、以下の表にまとめました。
このように、両者は競合する治療というより、役割の異なる治療法と考えるのが適切です。
施術事例【Qスイッチヤグレーザービフォーアフター】


上記は、Qスイッチヤグレーザーによるシミ治療の施術事例です。
施術前は、紫外線や加齢の影響により、境界がはっきりしたシミが目立っていました。女性の症例ではメイクで隠しきれず、肌全体が暗く見えてしまう状態でした。
Qスイッチヤグレーザーは、シミの原因となるメラニン色素に反応するレーザーをピンポイントで照射し、色素を破壊・排出させる治療です。周囲の正常な皮膚へのダメージを抑えながら、しっかりとシミにアプローチできるのが特徴です。
施術後の経過
一時的にレーザー照射部位が濃くなり、かさぶたが形成されましたが、自然に剥がれ落ちた後はシミが薄くなり、肌色が均一に整っているのが分かります。
ビフォーと比べると、シミの存在感が大きく軽減され、肌全体の印象も明るくなりました。
なお、施術後は炎症後色素沈着を防ぐため、紫外線対策と保湿ケアをしっかり行っていただいています。適切なアフターケアを行うことで、治療効果を安定させ、再発リスクを抑えることが可能です。
Dr.三沢
Qスイッチヤグレーザーは、濃くはっきりしたシミを1回の治療で改善したい方に適した治療法です。シミの種類や肌状態によっては、複数回の治療や他のレーザーとの併用をご提案する場合もあります。
よくあるご質問
ピコスポット、ピコトーニングとは何ですか?
ピコスポットは、主に濃くはっきりしたシミ(老人性色素斑など)に対して、ピコレーザーを高出力でピンポイントに照射し、シミの原因となるメラニン色素を破壊・除去する治療です。治療後はかさぶたができることが多く、1回の施術で効果を実感しやすいのが特徴です。
一方、ピコトーニングは、低出力のピコレーザーを顔全体に均一に照射し、薄いシミ・くすみ・色ムラ・肝斑などを少しずつ改善していく治療法です。刺激が比較的少なく、ダウンタイムがほとんどないため、複数回の施術を重ねて肌全体のトーンアップを目指します。
シミの種類や肌質、ダウンタイムの許容度によって、ピコスポットとピコトーニングを使い分けたり、併用したりすることもあります。
ピコレーザー後にシミがひどくなったり、戻りジミになることはありますか?
はい、可能性はあります。施術後に一時的に炎症後色素沈着が起こり、シミが濃くなったように見えることがあります。これはレーザー治療後によくみられる反応で、多くの場合は数か月かけて徐々に薄くなっていきます。
また、紫外線対策が不十分であったり、摩擦の強いスキンケアを続けてしまうと、戻りジミや再発の原因になることもあります。特に体質的に色素沈着を起こしやすい方や、肝斑がある方は注意が必要です。
医師の指示に従ったアフターケアと、適切な治療間隔を守ることで、こうしたリスクは最小限に抑えられます。
ピコレーザーとQスイッチヤグレーザーどちらでも施術後の自宅ケアは重要ですか?
はい、どちらのレーザー治療後でも自宅ケアは非常に重要です。レーザーの種類に関わらず、施術後の肌は一時的に刺激を受けやすい状態になっています。
特に重要なのは、
* 紫外線対策(SPF・PA値のある日焼け止めの使用)
* 十分な保湿
* 摩擦を避けたスキンケア
これらを怠ると、色素沈着やシミの再発、治療効果の低下につながります。逆に、適切な自宅ケアを続けることで、レーザー治療の効果を最大限に引き出し、より安定した仕上がりが期待できます。
ピコトーニングとレーザートーニングの違いは?
ピコトーニングは、ピコ秒(1兆分の1秒)単位で照射されるレーザーを使用し、メラニン色素を非常に細かく破砕できるのが特徴です。そのため、周囲の皮膚への熱ダメージを抑えながら、効率的にシミやくすみの改善を目指せます。
一方、レーザートーニングはナノ秒レーザーを用いた治療で、比較的穏やかに作用しますが、出力や照射条件によっては刺激が出やすい場合もあります。
肌質やシミの種類によって適した治療は異なります。医師の診察のもとで、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
まとめ
- ピコレーザーでシミが消えないと感じたとき、多くの場合は「治療が合っていない」だけであり、決して失敗とは限りません。
ピコレーザーとQスイッチヤグレーザーは、それぞれ得意分野が異なり、シミの種類や肌状態によって適切な選択が変わります。
- 肌への優しさを重視し、徐々に改善したい場合はピコレーザーが向いています。一方で、濃く目立つシミをしっかり取りたい場合には、Qスイッチヤグレーザーが有効な選択肢となります。
- 大切なのは、レーザーの種類だけで判断するのではなく、正確な診断のもとで治療計画を立てることです。
ピコレーザーとQスイッチヤグレーザーの違いを正しく理解し、ご自身に合った施術を選ぶことで、後悔のないシミ治療につながります。