
陥没乳頭とは、乳首が外に出ず、内側に引っ込んでしまっている状態のことをいいます。生まれつきの形状や乳管の短さ、皮膚や組織の癒着などが原因で起こります。見た目の問題だけでなく、授乳時に赤ちゃんが吸いにくくなったり、乳頭部分に汚れがたまりやすくなったりと、衛生面や健康面にも影響を与えることがあります。
軽度の場合は日常生活への支障が少ないこともありますが、見た目のコンプレックスや将来的な授乳への不安から、改善を望む女性は少なくありません。
結論から言えば、軽度の陥没乳頭はセルフケアや吸引器で改善が期待できることもあります。しかし、吸引器の使いすぎや誤った方法は炎症や損傷を招くリスクがあり、根本的で確実な改善を目指すなら形成外科での手術治療が最も安全です。今回の記事では、セルフケア方法、吸引器の活用法、医療機関での治療までを網羅的に解説します。
軽度の陥没乳頭の治し方・セルフケア

軽度の陥没乳頭は、乳首周囲の癒着や皮膚の緊張を少しずつ緩めることで外に出やすくなる場合があります。セルフケアはあくまで「軽度」の場合に限られますが、以下の方法が一般的です。
1. マッサージ法
入浴中や保湿クリームを塗ったタイミングで、指先で乳首を優しくつまみ、外側に引き出すようにマッサージします。
項目 |
内容 |
ポイント |
強く引っ張らず、1〜2分程度を目安に行う |
注意点 |
痛みや出血が出た場合は中止する |
効果の目安 |
毎日継続して数週間〜数か月で徐々に改善することもある |
2. 乳頭体操
両手の親指と人差し指で乳頭の根元を軽く押し込みながら、少しずつ持ち上げる動作を繰り返します。皮膚や乳管に過度な負担をかけないよう、無理のない範囲で行います。
3. 授乳・刺激法
授乳経験がある方の場合、赤ちゃんの吸引力が自然なマッサージ効果となり、陥没が改善することがあります。授乳経験がなくても、軽く刺激することで乳頭が一時的に出やすくなることがあります。
4. 吸引器の使用(セルフケアの一環として)
陥没乳頭用の吸引器は、陰圧で乳首を引き出す器具です。セルフケアの中では比較的効果が期待しやすい方法で、軽度〜中等度の方に向いています。
項目 |
内容 |
メリット |
家庭で手軽に使える、授乳前の準備としても有効 |
デメリット |
使いすぎや強すぎる陰圧で内出血や亀裂を生じる恐れがある |
使い方の目安 |
1回あたり数分〜10分程度、1日数回まで |
吸引器は「継続」がポイントですが、強い陰圧を長時間かけるのは逆効果です。改善が見られない場合は早めに医師に相談しましょう。
陥没乳頭は吸引器で治る?使った場合の効果・痛み

吸引器の効果は個人差がありますが、軽度であれば以下のような変化が期待できます。
吸引器の効果
- 即時効果:使用直後は乳首が突出しやすくなる
- 長期的効果:数週間〜数か月の使用で、癒着が緩み形状が改善する場合がある
- 限界:乳管の短縮や強い癒着がある重度タイプは改善が難しい
痛みや違和感・使用リスクについて
最初のうちは陰圧による引っ張り感や軽い痛みを感じることがあります。無理に続けると皮膚が切れたり内出血を起こすこともあるため、異常があればすぐに中止してください。
乳首を引き出す吸引器の選び方・使う時の注意点

吸引器をセルフケアに取り入れる際は、以下を参考に選びましょう。
吸引器 選び方のポイント
- サイズの適合性
乳首の大きさや形に合ったカップサイズを選びます。合わないと陰圧が均一にかからず効果が半減します。
- 陰圧の調整機能
強さを段階的に調整できるタイプが安全です。
- 肌に優しい素材
医療用シリコンなど、刺激が少ない素材がおすすめです。
- 清潔に保てる構造
分解して洗えるものを選び、使用後は必ず消毒します。
吸引器 使用時の注意点
- 1回の使用は10分以内
- 強く押し当てない
- 授乳中は使用後に必ず洗浄してから授乳
- 赤み・痛み・亀裂がある場合は中止
「もっと長く吸えば早く治る」と考えがちですが、過剰使用は逆効果です。むしろ皮膚を傷つけ、治療が必要になることもあります。
保険適用も可能、形成外科での陥没乳頭治療

セルフケアで改善しない場合や再発を繰り返す場合、陥没乳頭は、形成外科での手術治療が確実です。
乳管温存法とは?
授乳機能を残したまま乳首を出す方法。局所麻酔で短時間(約30〜60分)で行えます。軽度〜中等度に適応。
「切らない陥没乳頭」治療とは?
極小切開+乳管温存+目立たない傷跡+日帰り対応が可能な陥没乳頭の手術です。授乳機能を守りたい方や見た目の改善を望む方にとって選びやすい治療法です。
エムズクリニック「切らない陥没乳頭」治療の特徴・メリット
- 小さな傷で目立ちにくい
乳頭のくぼみに隠れる位置に、2mm程度の極小切開で治療を行います。そのため、術後の傷跡はほとんど目立たず、1ヶ月程度で見分けがつかないほどになります。
- 乳管を温存し、授乳機能を守る
母乳が通る乳管をできるだけ傷つけず、将来的な授乳への影響を最小限に抑える設計です。
- 後戻りのリスクが少ない
完全切開の従来法と比べ、時間経過による再陥没が少ないことが特徴です。
- 保険適用が可能なケースもある
「保険適用される切らない陥没乳頭形成」として、条件次第では3割負担で受けられる場合があります(例:40歳未満で出産・授乳予定があり、医師により授乳困難と診断された場合)。
保険適用の可能性
授乳障害や衛生面の問題がある場合は、保険適用での手術が可能です。美容目的のみの場合は自費になります。詳しくはクリニックでの診察・カウンセリングをおすすめします。
よくあるご質問
陥没乳頭をそのまま放置することのリスクは?
陥没乳頭を長期間放置すると、衛生面と健康面の両方で複数のリスクが生じます。まず、乳頭が皮膚の内側に引き込まれている状態では通気性が悪く、汗や皮脂、古い角質が内部に溜まりやすくなります。これにより細菌が繁殖しやすくなり、乳頭炎や乳腺炎といった感染症を繰り返す可能性が高まります。炎症が進行すると膿がたまり、強い痛みや発熱を伴い、抗生物質治療や切開排膿が必要になることもあります。
また、授乳期には赤ちゃんが乳頭をくわえにくく、母乳が十分に飲めないため、授乳トラブルや母乳の停滞を引き起こしやすくなります。これにより乳腺炎のリスクがさらに高まります。さらに、見た目のコンプレックスから自己肯定感が下がり、入浴やパートナーとの関係に心理的負担を感じる方も少なくありません。このように、放置することで身体的にも精神的にも悪影響を及ぼす可能性があるため、早期の対応が望まれます。
陥没乳頭は自然に治ることはありますか?
軽度の陥没乳頭であれば、思春期や妊娠・授乳期など、女性ホルモンの分泌が活発になる時期に自然と突出することがあります。これは乳腺や乳管の発達に伴い、乳頭周囲の癒着が緩むためです。授乳による繰り返しの吸啜刺激が、形状の改善に寄与する場合もあります。
しかし、中等度〜重度の場合は乳管や基部の線維性組織が強く癒着しており、自然改善はほとんど見込めません。加齢に伴い乳腺や皮膚の弾力が低下すると、むしろ引き込みが強くなるケースもあります。したがって、症状の程度に応じてセルフケアや医療機関での相談が必要です。
重度の陥没乳頭の場合は、セルフケアでの吸引器の効果はありませんか?
専用の乳頭吸引器は、軽度〜中等度の陥没乳頭においては一定の効果が期待できます。特に授乳前に短時間使用することで、赤ちゃんが乳頭をくわえやすくなる利点があります。
しかし、重度の場合は乳頭内部の乳管や結合組織の癒着が非常に強く、吸引器の陰圧だけでは構造的な改善が難しいことがほとんどです。一時的に突出しても、吸引をやめると短時間で元の陥没状態に戻るケースが多く見られます。また、無理な力で長時間使用すると、皮膚の損傷や血豆、炎症、色素沈着などの副作用を招くことがあります。重度の場合は、形成外科での外科的治療が再発予防や見た目の改善の点で有効とされます。
陥没乳頭の手術は何歳からが推奨ですか?中学生や高校生は?
陥没乳頭の手術に厳密な年齢制限はありませんが、乳房や乳腺の発達がほぼ完了する18歳以降が望ましいとされています。成長期である中学生や高校生では、手術後も乳房の形や乳頭の位置が変化する可能性があり、再手術が必要になる場合もあるため、基本的には経過観察やセルフケアで対応します。
ただし、重度で炎症や膿の繰り返しがある場合や、見た目の悩みから強い精神的ストレスを感じている場合には、保護者や本人の希望を踏まえて早期手術を検討するケースもあります。将来授乳を希望する場合には、乳管を切らずに温存する手術法(乳管温存法)を選ぶことで母乳育児の可能性を残すことが可能です。手術時期や方法は症状の程度・年齢・ライフプランを考慮して医師と慎重に決定します。
まとめ
- 陥没乳頭は、軽度であればマッサージや乳頭体操、吸引器などのセルフケアで改善する可能性があります。特に吸引器は手軽で一定の効果が期待できますが、使いすぎや誤った方法は皮膚損傷や感染のリスクを伴います。
- 最終的に根本的な改善を望むなら、形成外科での手術が最も安全で確実です。保険適用の可能性もあるため、セルフケアで改善が見られない場合は早めの受診をおすすめします。
Dr.三沢
吸引器は「補助的な改善方法」としては有効ですが、過信せず、長引く場合や再発する場合は形成外科での治療を選択することが、確実で安心な解決への近道です。