
陥没乳頭とは?
陥没乳頭(かんぼつにゅうとう)は、乳頭が内側に引き込まれたまま出にくい状態のことを指します。見た目の問題だけでなく、授乳が難しくなる・乳腺炎を起こしやすい・分泌物や臭いが気になるなど、機能面や衛生面で悩む女性も多い症状です。
特に20〜40代の女性では、出産や授乳を見据えて治療を検討する方が増えています。とはいえ、いざ手術を受けようとすると、「痛みはどの程度?」「術後はどんなケアが必要?」「再発しないの?」といった不安を抱くのが自然です。
今回の記事では、陥没乳頭手術を検討している方に向けて、術前に気をつけることから手術後の経過・ケア・再発・授乳までを解説します。正しい知識を得ることで、安心して治療に臨みましょう。
陥没乳頭 手術前に気をつけるポイント

手術前に最も大切なのは、自分の乳頭の状態を正しく把握することです。陥没乳頭は一般的に、次の3段階に分類されます。
このように、陥没の程度によって治療方法が異なるため、まずは形成外科・美容外科での診察を受けて、自分に合った治療法を確認しましょう。
手術前の具体的な注意点
- 1. 授乳を希望する場合は乳管温存法を選択する
将来授乳を希望しているなら、乳管を温存する手術を選ぶことが重要です。乳管温存法では乳管を傷つけずに乳頭を引き出すため、母乳の通りが保たれる可能性が高くなります。
- 2. 感染予防と体調管理を行う
手術前後は体調を崩さないよう注意しましょう。免疫力が低下していると感染のリスクが高まります。風邪や生理前など、体調が不安定な時期は避けた方が安心です。
- 3. 手術日当日はノーブラ・清潔な衣服で
手術当日は、患部を圧迫しない柔らかな服装で来院します。清潔に保つため、前日までにシャワーを済ませ、乳頭の周囲を清潔にしておきましょう。
- 4. 喫煙・飲酒を控える
タバコやアルコールは血流を悪化させ、傷の治りを遅らせます。少なくとも手術の1週間前から控えるようにします。
陥没乳頭 術後の経過

陥没乳頭の手術は、ほとんどの場合日帰りで局所麻酔により行われます。手術時間は片側で15~20分程度、両側で約30分~40分程度。
術後の経過は個人差がありますが、一般的な流れは次のようになります。
術後しばらくは乳頭の感覚が鈍くなることがありますが、時間の経過とともに回復します。傷跡も目立たないよう形成的に縫合されるため、最終的には自然な仕上がりになります。
陥没乳頭 術後のケアと過ごし方

術後の過ごし方次第で、再発のリスクや仕上がりの美しさが大きく変わります。以下のポイントを意識しましょう。
- 圧迫・吸引の固定をしっかり行う
術後の乳頭は、内側に戻ろうとする「戻り癖」があります。そのため、乳頭を外に出した状態を保つ「吸引装置」や「ボルスター固定」が行われます。
この固定を怠ると、せっかくの形が崩れたり再陥没のリスクが高まるため、医師の指示に沿って数日〜2週間ほどしっかり固定しましょう。
- 清潔を保つ
感染予防のため、シャワーは抜糸後に再開するのが一般的です。それまでは濡れタオルで体を拭くなどして清潔を保ちます。下着は柔らかく通気性の良い素材を選び、締め付けを避けます。
- 術後の生活習慣
・激しい運動や胸部への圧迫は1〜2週間避ける
・寝る時はうつ伏せを避け、仰向けで休む
・乳頭に強い刺激を与えない
・禁煙・禁酒を少なくとも1週間継続
- マッサージは医師の許可が出てから
乳頭を引き出すマッサージは、傷が完全に治った後(約2〜3週間後)から始めます。早すぎるマッサージは傷口を開かせてしまうため厳禁です。
陥没乳頭 手術中の痛み・手術後の痛みについて

手術中は局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。感覚としては「押される・引っ張られる」程度で、リラックスして受けることができます。
ただし、麻酔注射を打つときに軽いチクッとした痛みを感じることがあります。手術後は麻酔が切れる数時間後に鈍い痛みや違和感が出ることがありますが、鎮痛剤の服用でコントロールできる範囲です。
痛みや腫れが強い場合は、冷やすことで楽になります。
数日たっても熱感や膿、赤みが強い場合は感染の可能性があるため、必ず医師に相談しましょう。
陥没乳頭の手術後の再発可能性

陥没乳頭の手術は成功率が高いものの、再発するリスクは完全にゼロではありません。
一般的な再発率は5〜10%前後とされます。
再発の主な原因は次のとおりです。
- 手術後の固定を十分に行わなかった
- 重度の真性陥没乳頭だった
- 感染や炎症により瘢痕(はんこん)収縮が起きた
- 乳頭を引き込む線維組織が強く残っていた
再発を防ぐには、術後の固定と清潔管理、医師の指示を守ることが最重要です。
万が一再発しても、再手術で再び改善が期待できます。再発例では前回よりも弱い組織になっているため、修正手術で改善できるケースも多いです。
陥没乳頭の手術後の授乳について

授乳への影響は、手術方法によって異なります。
乳管温存法では、乳管を切らずに乳頭を引き出すため、母乳が通る道が確保され授乳が可能な場合が多いです。
一方で、重度の真性陥没乳頭では乳管が短く癒着しており、切離が必要になる場合もあります。その場合、母乳の通りが悪くなる可能性がありますが、片側の手術であれば反対側で授乳できるケースもあります。
Dr.三沢
妊娠中・授乳中はホルモンの影響で乳頭が一時的に変化することもあるため、手術の時期を計画的に検討することが大切です。将来授乳を希望している方は、カウンセリング時に必ず「授乳したい」と伝え、乳管温存法を希望しましょう。
よくあるご質問
手術法について、保険適用の場合と自費治療の場合に違いはありますか?
保険適用の手術は、主に「授乳障害の改善」などの機能回復を目的とした治療です。例えば、乳頭が陥没していて母乳が出にくい・乳腺炎を繰り返すなど、医学的な問題がある場合に保険が適用されます。この場合、施術方法はシンプルで、乳管を温存しながら陥没を引き出す再建術が中心です。
一方で自費治療(自由診療)は、見た目の美しさや左右差の調整など、審美的な要素も重視します。保険診療よりも糸や縫合の方法が繊細で、乳頭の高さ・形・バランスに配慮した仕上がりを目指すことができます。また、再発防止や傷跡の目立ちにくさにも工夫を凝らすことが多く、結果として満足度が高い治療となる傾向があります。
どちらを選ぶべきかは、授乳を目的とするのか、美容面を重視するのかによって異なります。まずは医師に「どちらの目的で手術をしたいのか」を明確に伝えることが大切です。
手術後、すぐに運動してもいいですか?いつ頃からできますか?
手術直後(1週間以内)は、出血や腫れを防ぐために運動や入浴、胸のマッサージは避ける必要があります。特に胸部を大きく動かす運動(腕立て伏せ、テニス、ヨガ、筋トレなど)は、縫合部に負担をかけてしまう恐れがあります。
一般的には、術後7〜10日ほどで抜糸を行い、軽い日常動作(散歩や家事)であれば可能になります。傷が落ち着き、痛みが少なくなれば、約3〜4週間後から軽い運動を再開できる方が多いです。
ただし、乳頭部分はデリケートな組織のため、完全に安定するまでは無理をしないことが大切です。違和感や赤み、痛みがあるうちは安静にし、医師の許可を得てから運動を再開するようにしましょう。
個人差があると思いますが、術後何ヶ月たったら安定しますか?
術後は、1〜2週間で腫れや痛みのピークが過ぎ、その後は徐々に落ち着いていきます。1ヶ月程度で日常生活に支障がない状態になりますが、乳頭の形や感覚が完全に安定するまでには3〜6ヶ月程度かかるのが一般的です。
この間、体質や生活習慣によっても経過は異なります。たとえば、皮膚が薄い方や再発を防ぐために深く固定したケースでは、安定までやや時間がかかる傾向があります。また、タバコや飲酒、睡眠不足などは傷の治りを遅らせる要因になるため注意が必要です。
半年ほど経過すると、乳頭の硬さが自然になり、傷跡も肌になじんでほとんど目立たなくなります。焦らず、医師の経過観察を受けながら、時間をかけて回復を見守ることが理想です。
陥没乳頭手術と同時にまたは術後に行った方が良い治療はありますか?
陥没乳頭手術は、見た目と機能の両方を改善する施術ですが、美しい仕上がりを維持するための補助的なケアや治療を併用することもおすすめです。
たとえば、術後の乾燥を防ぐために保湿クリームを塗ると、傷跡の赤みやつっぱりを軽減できます。また、色素沈着や乳輪の黒ずみが気になる場合は、トラネキサム酸やハイドロキノン、医療用レーザーによる美白治療を取り入れると良いでしょう。
さらに、授乳を予定している方の場合は、乳管温存法を選ぶと母乳が出やすくなります。術後は乳頭のマッサージを行うことで柔軟性を保ち、再陥没を防ぐ効果も期待できます。
その他、胸の形や左右差を整えたい方は、乳輪縮小術や軽度の豊胸治療(ヒアルロン酸注入など)を組み合わせるケースもあります。希望や目的に合わせて、総合的に相談すると満足度の高い結果につながります。
まとめ
- 陥没乳頭の手術は、見た目の改善だけでなく、授乳や衛生面での悩みを解消できる治療です。術前の準備や術後のケアを正しく行えば、自然で美しい乳頭を長く維持することができます。重要なポイントは以下の通りです。
・陥没乳頭の程度により治療法は異なる
・授乳希望がある場合は乳管温存法を選ぶ
・手術後は固定・清潔・禁煙・禁酒を徹底する
・マッサージや刺激は医師の許可が出てから行う
・再発を防ぐには術後ケアが最も大切
- 一時的なダウンタイムはありますが、「乳頭が出るようになった」「授乳ができた」「見た目の悩みがなくなった」といった満足感を得る女性が多いのも事実です。自分に合った治療法を選び、正しい知識を持って、安心して陥没乳頭の治療を受けてください。