半年以上前の事ですが、美肌治療で通っていた方がいつものように定期的なメインテナンスとたるみの治療であるウルトラセルのHIFU(ハイフ)治療をを希望され訪れて頂いた時の事です。
施術室でお待ちだったので、お肌の状況の確認とその日の施術内容の確認も兼ねてご挨拶をしに部屋に入った瞬間、すぐにお顔の異変に気付きました。
私:『どうしましたか?』
患者さん:『そうなんですよねー、なんか右側がおかしいんですよねーー、感覚がないというか・・・』
私:『いつからですか?』
患者さん:『今日朝起きてからです。大丈夫ですかね?HIFU(ハイフ)を今日やるの?』
私:『今日は美肌治療もハイフもやめましょう。診察室で続きをお話します。』
その時のお顔の状況です。↓
完全な右側の顔面神経麻痺です。
おでこにシワを寄せても右側はボトックスを打ったかのように動きません。
目を閉じても眼輪筋が収縮しないので閉瞼不全の状態です。
口の筋肉も障害を受けるので空気が漏れ、水を飲んでもこぼれてしまいます。
顔面神経麻痺は、突然起こります。特発性といって原因不明のものであれば、ウィルス性で起こる場合もあります。
顔面神経は脳神経の一つです。脳からでた神経繊維は耳の奥から外側=表情筋側に到達します。上の解剖図でいう黄色の繊維です。
これは以前に耳下腺腫瘍の手術をした際の術中の写真です。
白い繊維が顔面神経です。手術中この顔面神経の走行に注意しながら手術を行います。
そして、3日経過した時点のことです。↓
耳の周りに皮疹が出現しました。
結果的にこの方は、ウィルス性によう顔面神経麻痺=ラムゼイ・ハント症候群でした。
ラムゼイ・ハント(Ramsay Hunt)症候群は末梢性 顔 面 神 経 麻 痺 を 伴 う 帯 状 疱 疹 の 一病 型 で あ り 、そ の 病 因 は 水 痘 ・ 帯 状 疱 疹 ウ イ ル ス( v a r i c e l l a – z o s t e r virus:VZV)が再活性化することで起こります。単純ヘルペスウイ ル ス 1 型( h e r p e s s i m p l e x v i r u s t y p e 1 : H S V – 1 )が 主な原因で起こるベル(Bell)麻痺と比較して、顔面神 経麻痺の予後は不良で後遺症の残る頻度が高いこと から、早期診断と積極的な治療介入、誘発筋電図など による予後診断が重要です。そのためには、初期症 状によりラムゼイ・ハント症候群の診断をつけ、直ちに抗 ヘルペスウイルス薬とステロイド薬の投 与を開 始 す る ことが重要です。
したがって、この方には来院されたときよりステロイド及び抗ウィルス剤の投与を行いました。そして、以前に長男もお世話になった近くの耳鼻科医師にコンサルトを行いました。幸いにその先生は顔面神経の専門でしたのですぐに対応していただき加療が継続されたということでした。