今回ご紹介するのは、ちょっと珍しい疾患:毛瘡洞です。
ケース:20代 男性
悩み:臀部のデキモノ、繰り返す炎症
です。
毛巣洞(もうそうどう、もうそとう)は、毛深い体質で若い男性に多く見られ、ジープに長時間乗る米軍兵士などに多く見られることから別名ジープ病(Jeep Disease)と呼ばれています。
*ちなみに、Naval Hospital時代の外科でトレーニングを受けている頃、この毛巣洞の手術に入ることがありました。
毛巣洞の原因は、臀部の仙骨部が圧迫されて体毛(お尻の毛)が皮膚の中に入り込んでいき内部で瘻孔を形成し、それが炎症を引き起こします。また今回のように腫瘍化して臀部のシコりを形成したり、それが大きくなり再び炎症を繰り返すなど、本人は日常生活(椅子に座る等)が困難になるほどの痛みを伴うほどの状態になることがほとんどです。
このように毛深い人がなる疾患です。→で指しているのが瘻孔の入り口です。
瘻孔という入り口なので、このようにカテーテルが入ってしまいます。これは施術前の状態ですが、カテーテルを抜くと体毛が瘻孔から出てきました。
施術前のMRI撮影です。このケースは珍しく造影剤なども使用せずとも瘻孔と嚢腫というデキモノが描出されました。施術前計画として、瘻孔を含めて嚢腫を一塊として摘出することが重要です。
なぜなら、どちらかを残せば再発リスクが高まるからです。
嚢腫と瘻孔をひとかたまりで摘出した状態です。黄色の矢印で示すのは瘻孔の一部が破れた時に中に詰まっている毛がはみ出してきたところです。摘出後、瘻孔を縦に切開するとやはり毛が多く認められました。
ここからが重要です!
臀部;臀裂部にこのような大きな欠損が生じた場合、単純に直線状に縫合し閉鎖することオススメしません。
というのは、お分りかと思われますが座った時やかがんだ時などお尻が左右に引き延ばされる時に負荷がかかるのはこの臀裂部といって真ん中の生中部ですから、縦に単純に縫合すると力がくわり傷口が裂けてしまう恐れがあります。
ですから、このように形成外科特有の再建方法の一つである皮弁法を用いることで術後のそのような合併症などを予防することができるのです。
今回用いた皮弁法=Rhomboid skin local flapです。
縫合線がジグザクになるので以前も提示しましたが傷に対する負担が軽減され、結果的には傷跡もキレイになるような手法です。
負荷がかかる臀部などは抜糸するのに2週間要します。
また、いずれ違った部位での新たな病変を予防する上でも脱毛は必要かもしれません。。。
毛巣洞の手術合併症
出血、感染、術後瘢痕問題(ケロイド、肥厚性瘢痕などの発生)、麻酔によるアレルギー、再発など
毛巣洞の料金
毛巣洞にかかる自己負担金
約¥45,000円
*費用の幅は、部位や大きさによって変わります。