先日の形成外科学会総会(福岡)での外国人招待講演は、アメリカ・マイアミのDr.Roger Khouriによる『乳房再建における脂肪注入』についてでした。
Dr.Khouriは、手の外科専門の形成外科医ですが、全ての形成外科分野に精通しているのがアメリカの形成外科医であり、特に美容外科という分野においても同じ再建外科を行うということで、大変立派な業績を残されている先生です(だから、招待されたのですけどね)。
先日、ある深夜番組でiPS細胞を発見した京都大学の山中教授が出演されていたのですが、脂肪という組織は非常に注目されている細胞です。とくに脂肪という塊の中に存在する脂肪幹細胞は、色々な細胞(皮膚、毛髪など)に分化することができる細胞です。また、免疫系や色々な機能にも関与しているので、ボディビルダーや女性から悪とされる組織である脂肪は一概になくても良いものではないということです。逆に、必要だということです(あり過ぎも良くないので、ほどほどな感じで脂肪がついているのがベストなんですが、これが難しい〜〜)。
私も、この脂肪という組織に幼少期より大変興味があり、それをライフワークとする形成外科、そして美容外科というものに自ずと導かれて現在に至るといった状況です。
福岡での講演の話に戻しますと、
乳がんなどで失われた乳房を再建するのに現在では多くの施設で脂肪細胞による脂肪移植が行われています。脂肪を移植するので(他部位から採取した脂肪を移すこと)、もちろん生着率(脂肪がどれだけ留まってくれるのか?)というものが重要です。
講演ではその脂肪移植の生着率に関しては、
①移植する脂肪細胞の状態
②移植床(=移植される場所、例えば今回のような顔や胸)の状態
③移植する外科医のスキル(技術)
④術後の状態:ケア
という4つの事象が相互リンクして脂肪移植の生着率が高まるという事でした。
目の下のクマ治療に用いる脂肪移植
今回紹介する、
脂肪移植:目の下のクマ治療に用いる脂肪は、太ももの内側より採取した脂肪を用います。目の下に注入する脂肪は、粒が細かいものが良いとされています。お腹などからも脂肪を取る事ができますが、粒が大きいのであまりオススメしておりません。
Dr.Khouri(クーリー)は、脂肪を採取したら大事な移植する細胞(=ドナーと言いいます。)を大事に扱います。遠心分離機などの負荷をかけないようにしているようです。←私もこれに関して同意見です。
移植するための脂肪は、麻酔液や血液といったものと一緒に採取されます。それらを分離するのに遠心分離機で行います。確かに、脂肪細胞とそれ以外のものを綺麗に分離することはできますが、この遠心分離機にかけることは脂肪細胞に3000回転という力を加えることになります。
例えば、生身の人間に1分間に3000回転したらおそらく大変な事が起こるでしょう(場合によってしに至るでしょう)。ですから、分離するという目的だけにそのような負荷を大事な移植片にかけてもいいものだろうか?という疑問をもつのは自然だと考えます。したがって、Dr.Khouriの考えには賛成ですし、M’s(エムズ)ではピュアグラフトという方法で脂肪細胞とそれ以外を分離することにしています。
ピュアグラフト↓に関しては、
目の下のクマ治療 3ヶ月後
他院で脱脂術後のくぼみ・たるみ修正 40代 女性に脂肪注入でクマ治療
脂肪移植術(注入)のことを踏まえて。
今回紹介する方は、
40代 女性
過去に他院で脱脂術のみを受けられた事がある方です。
お悩みは、目の下がくぼみ、皮膚のたるみも出始め、目の下のクマが再び目立つようになってきたという事でした。
カウンセリングで患者さん自身は、目の下の余った皮膚の切除を要望されていました。
確かに年齢と共に皮膚あまり=余剰皮膚という問題は発生してきます。また、脱脂術を受けられていれば目の下に出ていた眼窩脂肪が取れられてしまいます。皮膚の膨らみはなくなる一方でそこを覆っている皮膚はたるむので当然ですが皮フのあまりが生じます。
*脱脂術のみで上手くいく方とそうでない方がいるのでそこを見分けることも“目の下のクマ”治療をする上で大変重要なことです。
したがって、脱脂術を受けた場合には余剰皮膚は当然ながら年齢で生じるよりも早く生じてきます。
そういった現象が今回の方には起こりました。
ですが・・・、
今回の方に初めに余剰皮フ切除のみをお勧めすることはできませんでした。まずは形態変化を整えて、それでも余ったりシワが目立つような皮膚であれば次に切除する。それらを同時に行うことも可能です。
ですが、
余剰皮膚を切除すれば=皮膚を切除すれば縫合する必要があります。つまり、ダウンタイムです。
今回ダウンタイムを気にされていたので、まず行ったのが『脂肪注入:ピュアグラフト』です。
施術前と施術後(3ヶ月)の比較 脂肪注入
いかがでしょうか?
脂肪注入のみでも目の下のクマが改善されており、たるみも軽減された方と思います。
術後の経過
術前の状態です。目の下に影があります。以前、説明したTear trough defomity↓
を認めます。
この方の術前のお顔全体を見ればわかりますが、目の下〜tear trough derfomity〜頬脂肪体〜ほうれい線と境界がくっきりと分けられており、それらが目立つようになっています。
若さの象徴とも言える目の下の理想的な形態は、涙袋〜頬が一様な凸面=S字カーブであるのが理想です。ですから、この方の要望で余剰皮膚切除だけでは、tear trough derfomityまでは改善することも出来ませんし、理想のカーブを形成するためのリフト効果は期待できません。
したがって、まずは形態変化を整えるため=tear trough deformityや頬の一様化を目指すことが必要だと考えました。
そして、それでも皮膚のタルミやシワが目立つようあれば、皮膚切除を行う方が賢明だと考えました。
*上まぶたでもそうですが、一度切除した皮膚は戻ってきません。戻ってくるには年齢とともに弛んできた皮膚なので回復するのに10年以上時間が必要です。
*tear trough deformityを改善するだけであれば、ヒアルロン酸でも可能です。ヒアルロン酸は、tidel(チンダル現象:皮膚が水のように透ける現象)や吸収されるので反復して(半年に一回程度)行う必要あります。
施術直後からの経過
施術直後の状態です。ほぼ腫れることもなく、tear trough defomiytも改善して終了する事ができました。
施術1週間後の状態です。
施術1ヶ月後の状態です。
施術3ヶ月の状態です。目の下から頬にかけての形態は整いました。こうなった時点で、目の下にできているシワのよう皮膚余りをトリミング(調整)するのは可能だと思います。
また、この方の場合、S字カーブの位置が下=ほうれい線に近いに位置しています。ミントリフトなどの中顔面リフトが必要だと思われます。それによって中顔面の位置=頬の位置を高くする事で理想的なS字カーブに近づける事ができると考えています。
中〜下顔面治療:目の下のクマ治療、ミントリフト
脱脂術+脂肪注入(ピュアグラフト)の手術合併症
だるさ・熱感・頭痛・蕁麻疹・痒み・むくみ・発熱、目がゴロゴロする、左右差があると感じる、違和感を感じる、目の上、目の下のくぼみなど
脱脂術+脂肪注入(ピュアグラフト)の料金
価格:¥450,000(税別)