皮膚にできたデキモノは皮膚腫瘍といいます。
よく、
「ホクロはガンになりますか?」
「粉瘤といわれたのですが、取った方が良いですか??」
など、
診療をしていると質問をされます。
今回は、皮膚のできものに関することを説明したいと思います。
皮膚腫瘍(皮膚のできもの)
皮膚のできものは皮膚腫瘍といいます。腫瘍なので細胞が増殖(大きくなる)します。
皮膚の腫瘍は、そのもととなる細胞により分類されますが、大きく分けると悪性のもの(皮膚癌)と良性の腫瘍に分類されます。
その増殖する細胞がどの部位で、どの程度増殖するかが重要です。
皮膚の構造
皮膚悪性腫瘍
悪性皮膚腫瘍の中で比較的多いものとして、有棘細胞腫、基底細胞腫、悪性黒色腫などがあります。
性状は各々異なりますが、悪性を疑う場合として、出血する、ジクジクする、周囲との境界が不鮮明である、等の特徴があります(もちろんこれらの特徴がなくても悪性の場合はあります)。
皮膚の悪性腫瘍の治療は、手術により切除する事が原則です。腫瘍周囲を含めて切除するだけで良い場合も多くあります。
いずれにしても専門医による診察を受ける事が重要です。
有棘細胞癌(squamous cell carcinoma)
有棘細胞癌は、皮膚がん中最多な皮膚悪性腫瘍です。日光(紫外線)、ヒ素、放射線などが原因で発症するといわれています。
急速に増殖し、特有な悪臭を発します。早期からリンパ行性、そして血行性に転移をします。
中高年以降の男性に多く好発(男女比=10:7)と言われており、皮膚悪性腫瘍の中で50%以上を占める皮膚がんです。日本人では以下の先行病変を生じることが多いです。
先行病変・・・熱傷瘢痕、色素性乾皮症、慢性放射線皮膚炎、光線角化症、老人性角化症、Bowen病など顔などの日光があたる露出部に好発します。
治療は切除ですが、その後、放射線療法や抗ガン治療などを用いることもあります。
基底細胞癌(basal cell carcinoma)
基底細胞癌も多く認められる皮膚悪性腫瘍の一つです。日本人ではほとんどが黒色調で、有棘細胞癌と同様顔なの露出部に好発します。
80%以上は顔の正中に発症します。例えば鼻などです。
鼻にできた基底細胞癌
*一般的に遭遇する皮膚がんです。臨床的(実際の診療では有棘細胞癌よりも多い印象があります。)には多く遭遇します。超名人やオーストラリア出身の俳優さんなどもこの皮膚がんを発症し治療をしたというのも有名な話です。
治療は切除です。
基底細胞癌の分類
①結節潰瘍型 |
最多、中央が潰瘍化、顔面正中部に多い |
②瘢痕化扁平型 |
中央が瘢痕化、周囲に小結節 |
③表在型 |
体幹に多い、扁平隆起性の局面 |
④斑状強皮症型 |
中央の陥没した浸潤局面 |
⑤破壊型 |
①の進行した型で、軟組織、骨なども破壊 |
⑥ビンカス腫瘍 |
体幹の有茎性小腫瘍 |
悪性黒色腫(malignant melanoma)
通称、メラノーマといわれる皮膚悪性腫瘍です。発生母地はメラノサイトといわれる細胞です。
発症する割合では人種差もあり、白人>黄色人種>黒人の順です。白人では顔などの露出物に発生しますが、黄色人種である日本などでは下肢足底に多く認められます。
急速に増殖しかつ深く浸潤します。リンパ行性、血行性ともに転移しやすく、非常に予後の悪い皮膚悪性腫瘍です。
皮膚悪性腫瘍の基本治療である切除は当然なのですが、再発防止のためにも腫瘍のみだけではなく、腫瘍の周りを多く含めて切除する広範囲切除が必要です。
皮膚良性腫瘍
皮膚腫瘍あるいは皮膚から触れる良性腫瘍の中には、各種のものがあります。存在していても他の臓器に転移することがありません。
ですから、悪性腫瘍と違い良性と分類される由縁ではありますが、局所で増殖して大きく、その主なものを以下に述べます。
色素性母斑(ほくろ)(melanocytic nevaus)
母斑細胞というメラニンを作る細胞からなる良性腫瘍を色素性母斑、あるいは母斑細胞母斑といいます。
褐色から黒褐色をしていて、形はたいらなものから、膨隆したものまであります。
治療は切り取ってしまう方法、あるいはレーザー治療が効果的なものもあります。
唇にできたホクロ
粉瘤(epidermoid cyst)
粉瘤とは、皮膚の一部が陥凹して袋状になったものです。表皮の陥入による角質嚢腫です。
半球状で皮膚に癒着して下床とは可動性のある弾性硬の腫瘤です。袋が皮膚とつながっているため、動かそうとすると皮膚と一緒に動きます。
内容物は白い粥状のもので読んで字の如く粉のようなもので悪臭を放ちます。
大きくなる傾向にあり、中の内容物が漏れ出ると炎症を起こします。
細菌による二次感染を来すと、猛烈な痛みを伴います。治療は早期のうちに切り取り摘出することが原則です。
顔にできた粉瘤
脂漏性角化症(seborrheic keratosis)
老人性のイボとも言われるものです。表皮の加齢性変化です。
中年以降の顔面や体幹に生じる丘疹で、色は茶褐色〜黒色を呈します。時にかゆみを伴います。
皮膚悪性腫瘍と鑑別が必要なこともあります。自然消失することはありません。
黄色腫(xanthoma)
眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)は上下眼瞼(まぶた)にできる黄色の扁平な皮膚のデキモノです。
コレステロールがたまったものと言われています。
原因は、目を擦るなどの機械的刺激や炎症に伴って血液中のコレステロールが血管外に漏れ出て皮下に沈着します。
黄色腫の方の約1/3は脂質異常症(高脂血症)と伴っており(*その場合は高脂血症Ⅱa型の場合が多いのです。)、その場合は両側性に発生することが多いです。一方で残りの2/3では高脂血症が認められません。
前者における脂質異常症(高脂血症)では、コレステロール値の異常高値が原因なので、それを運動や内服加療などによって改善することは当然なのですが、これは皮膚に沈着した結果、皮膚のデキモノとなっているので、血中コレステロール値を改善しても自然消失することはありません。
眼瞼黄色腫
脂肪腫(Lipoma)
皮膚とくっつかずに良く動く軟らかい腫瘍として触れます。
皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中では、最も多くみられる良性の腫瘍( できもの)です。脂肪腫には、皮下組織に見られる浅在性脂肪腫と、筋膜下、筋肉内、筋肉間に見られる深在性脂肪腫があります。
身体の各部に発生しますが、背部、肩、頸部などに多く、次いで上腕、臀部、大腿などのからだに近い方の四肢に多くみられます。顔面、頭皮、下腿、足などは比較的まれです。
大きさは数mm径の小さなものから、直径が10センチ以上に及ぶものまでいろいろです。通常、痛みなどの症状は無く、皮膚がドーム状に盛り上がり、柔らかいしこりとして触れます。
診断は、臨床症状と、画像検査で行います。画像検査にはエコー検査、CT検査、MRI検査があります。
区別を要する疾患として、皮膚由来の嚢腫や軟部組織の肉腫(悪性腫瘍)などがあります。
画像上、悪性の分化型脂肪肉腫と鑑別が困難なこともあり、摘出し、病理組織学的検査を行った方が良いこともあります。
右肩にできた脂肪腫
ガングリオン(ganglion)
主に関節周囲に生ずる、表面が平滑な腫瘍です。皮膚とのつながりはなく、圧迫により生ずる事があります。
中には粘液が入っていて、無症状の場合は様子を見る事も多いです。
まとめ
1. できものは腫瘍です。
2. 皮膚腫瘍は大きく分けて悪性と良性に分けられます。
3. 腫瘍における治療原則は切除です。