脂肪腫とは?用語説明
脂肪腫とは?
脂肪腫は皮膚の下=皮下でゆっくりと成長する脂肪組織が増殖したものです。年齢を問わず起こりえますが、小児では珍しいのが特徴です。
脂肪腫は体のどこにでも派生しますが、好発する部位としては以下となります。
好発部位 良性か悪性かの違い・見分け方
脂肪腫はほとんどが良性であることが多いのですが、稀に脂肪腫と思われていたのものが悪性だったりすることもあります。
良性か悪性かの見分け方として、見ただけではわからないので、診察後の超音波検査やMRI検査が必要で、治療の原則としては手術となります。
脂肪腫の症状とは?
皮膚・皮下腫瘍は多種・多様あります。脂肪腫はその中においても区別ができる以下のような特徴があります。
主な原因・症状・特徴・できやすい人
脂肪腫の原因は不明ですが、脂肪細胞の増殖のためとされています。
- 触れると軟らかい
- 指で押したりすると弾力があり、可動性がある
- 皮下に存在する
- 皮膚の色が正常
- ゆっくりと大きくなる
脂肪腫は頚部、上腕、太もも、前腕などに好発しますが、稀に目の結膜(*結膜に発生した脂肪腫)や体の内部である胃などにも発生します。
主な症状は特に認めませんが、皮下にある神経などを圧迫すると痛みなどを認めることがあります。その場合、脂肪腫の中でも血管筋脂肪腫(Angiolipoma)といわれる脂肪腫で、通常の脂肪腫よりも痛みを訴えて来院される方がいます。
血管筋脂肪腫(Angiolipoma)は多発することがある脂肪腫です。個人的な経験では、20個以上発生した方がいました。
脂肪腫ができやすい人として、比較的、太っている人ができやすいといわれますが、痩せている人もできる場合があります。特に太っている人が痩せたときに、脂肪腫に気づくことがあります。
写真で確認 大きな脂肪腫の例
脂肪腫を放置するリスクは?
脂肪腫は、皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中では最も多くみられる良性の腫瘍( できもの)です。脂肪腫には、皮下組織に見られる浅在性脂肪腫と、筋膜下、筋肉内(*筋肉内脂肪腫について)、筋肉間に見られる深在性脂肪腫があります。
普通は、成熟脂肪組織で構成される柔らかい単発性腫瘍ですが、稀に多発することがあります。それが前述の血管筋脂肪腫であり、血管成分の多い脂肪腫です。最大径が1~2センチと小ぶりで、しばしば多発します。
脂肪腫と脂肪肉腫(悪性)の見分け方
脂肪腫の鑑別として最も重要なものに肉腫があります。肉腫とは悪性軟部腫瘍です。肉腫の中でも脂肪細胞から発生する脂肪肉腫というものがあります。
脂肪腫と脂肪肉腫を画像上(MRI,CTなど)で鑑別することは困難なことが多く、摘出して病理検査を行うことで判断することになります。
脂肪腫の診断の方法・粉瘤との違い
脂肪腫の診断はまずは身体所見です。経験豊富な医師が触診(実際腫瘍に触れること)によって約60%は脂肪腫と診断することができます。
しかしながら、前述の脂肪肉腫との鑑別は画像検査でも分かりにくいことが多いため、その他の皮膚・皮下腫瘍である皮膚のできもの、例えば粉瘤との鑑別なども触っただけでは分からない場合もあります。
脂肪腫か粉瘤か見分けるのに役立つのが超音波検査(エコー検査)です。
超音波検査-
超音波検査、通称エコーという検査は、外来で簡単で行える検査の一つです。痛みも伴わず、脂肪腫と思われる部位にエコーゼリーを塗布して機械を置くだけで、ある程度は脂肪腫であることがわかる検査です。
頭にできた腫瘍です。頭にはよくできる腫瘍の代表的なものとして脂肪腫、そして粉瘤があります。触っただけでは分かりにくいことが多いので、このようにエコーを当てるだけでわかることがあります。
これがエコーで行なった結果です。黄色の点線で囲った部分が腫瘍となります。
脂肪腫でなかった場合の画像
これは足に脂肪腫ができたということで来院された方のエコー検査の結果です。
足の関節部分に盛り上がり、触ると脂肪腫のように弾力性のある膨らみでした。この部分にエコー検査を行った結果病変は黄色の点線で囲った部分です。上と比べて頂ければお分かりですが、内部の色が違うのが分かります。
超音波検査では脂肪腫と他の腫瘍を鑑別するには簡便に行うことができます。粉瘤などと鑑別するには最も適した検査となります。
しかし、腫瘍の全体像、腫瘍の内部、腫瘍周囲の臓器:血管などの関連性、また悪性軟部腫瘍である肉腫との鑑別などには不十分な検査法です。
そこで、さらに詳しい検査として次なるステップなのが、MRI検査となります。
MRI検査-
脂肪腫をMRI検査行った場合の画像を下記に示します。
これは肩にできた大きな脂肪腫です。白く多房性になっている部分が腫瘍そのものです。
頭にできた脂肪腫です。頭蓋骨まで浸潤しておりませんが、頭頸部にできた脂肪腫は骨膜や筋膜などにベッタリと癒着していることが多いです。
脂肪腫の治療方法
外科手術による治療
脂肪腫は早急に治療することは必要のないデキモノです。ですが、症状(痛みなど)が出現したり、徐々に大きくなり始めた場合には、治療の対象となります。
また、悪性軟部腫瘍である脂肪肉腫との鑑別は摘出してはじめて診断がつきます。ですから、まず見つけたら一度、医療機関を受診して、診察・検査を受ける事をお勧めします。
脂肪腫の手術は日帰り手術が可能
体表面(体の触ってわかる部位)にできた脂肪腫はほとんどのケースで、外来で局所麻酔下にて手術が行えます。脂肪腫は手術をして摘出した場合、再発することはほとんどありません。
脂肪腫摘出手術における主な合併症は、通常の手術で起こる出血、感染などがありますが、その他、漿液腫(脂肪腫があったスペースに水がたまる)の発生や傷跡などの術後合併症があります。
漿液腫とは脂肪腫があった部位は隙間が発生します。その間に浸出液が発生することで起こります。漿液腫は穿刺といって針を刺して貯まった浸出液を取り出す場合がありますが、再発などを繰り返すと難治性となる場合もあります。漿液腫の発生には予防することができます。
手術後は安静に過ごす
術後の患部を安静にすることが重要です。また、大きな脂肪腫を取り除いた場合に漿液腫の発生が多く認めます。その場合には、ドレーン(医療用のシリコンチューブ)を留置して発生の予防に努めます。
熟練した外科医であれば、脂肪腫はあっという間に摘出することができます。その場合、腫瘍の大きさの1/5程度の小さな傷で行うことができます。
しかし、癒着が激しかったり、出血などのリスクが上がるようであれば、多少切開創を広げて行うことが安全です。
たとえ手術の傷跡が大きくなったとしても形成外科専門医であれば、丁寧に縫合することで傷跡を目立たなくすることもでき、また傷跡のトラブルである肥厚性瘢痕やケロイドなどのリスクも最小限にすることができます。
【保険適用可能】手術費用
露出部 5,000~14,000円
非露出部 4,000~13,000円
脂肪腫の治療 まとめ
・脂肪腫は良性腫瘍のことが多く、稀に悪性腫瘍である肉腫などが存在します。
・脂肪腫を診断するには超音波検査やMRIなどが適しています。
・脂肪腫と脂肪肉腫の鑑別は術前で正確に診断することは困難であり、摘出した病変の病理検査が必要です。
・脂肪腫の治療原則は、手術による摘出。