
「まぶたが重い」「目が開きづらい」「昔より目が小さく見える」──こうした悩みを抱える方の中には、自分が「一重だから」と思い込んでいるケースが少なくありません。しかし、その症状は単なる一重まぶたではなく、「眼瞼下垂(がんけんかすい)」というまぶたの病気が関係している場合があります。
見た目の印象が似ていても、眼瞼下垂と一重まぶたは原因も対処法もまったく異なります。今回の記事では、両者の違いを正しく理解し、適切な治療につなげるためのポイントを解説します。
眼瞼下垂とは?一重まぶたとは?

まず、それぞれの定義とメカニズムを理解しておきましょう。
眼瞼下垂とは?
上まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋やミュラー筋)の働きが弱くなり、まぶたが十分に開かない状態を指します。
まぶたが黒目の上にかぶさってしまい、視界が狭くなることもあります。
主な原因には以下のようなものがあります。
- 加齢による筋力低下(加齢性・後天性眼瞼下垂)
- ハードコンタクトレンズの長期使用による筋膜の緩み
- 先天的に筋肉の発達が弱い(先天性眼瞼下垂)
- 目の手術や外傷、神経の病気などによる後天的な障害
その結果、「目つきが悪く見える」「眠そうな印象」「額のシワが増える」「肩こり・頭痛が起きやすい」といった美容面・健康面の影響が出ることもあります。
一重まぶたとは?
一重まぶたは、もともと「まぶたの皮膚構造」によるもので、病気ではありません。
まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)は正常に働いていますが、皮膚の折り返し(二重のライン)が形成されていないため、まぶた全体が厚く見えたり、目が小さく見えたりするのが特徴です。
つまり、一重まぶたは「筋肉の機能は正常だが、皮膚の構造上、二重の線がない状態」です。
眼瞼下垂と間違われる症状

「まぶたが重い」「二重のラインが消えた」と感じたとき、それが眼瞼下垂かどうかを自己判断するのは難しいものです。実際には、以下のような症状も眼瞼下垂と混同されがちです。
- 加齢による皮膚のたるみ(皮膚性眼瞼下垂)
まぶたの皮膚がたるむことで、黒目にかぶさってしまうケース。筋肉は正常でも、皮膚の弛緩で見た目が似てしまいます。
- 二重のラインが奥に入り込んだ「三重まぶた」
加齢やむくみにより、二重の線が曖昧になっている状態です。これも眼瞼下垂と誤解されやすい症状です。
- むくみや脂肪によるまぶたの腫れぼったさ
朝起きたときや疲労時など、一時的にまぶたが腫れぼったく見えるケースもあります。
- ドライアイやアレルギー性結膜炎による腫れ
炎症でまぶたが重く感じることがあり、これを眼瞼下垂と混同する人も少なくありません。
これらの症状は、眼瞼下垂とは異なり、筋肉そのものの機能には異常がありません。
しかし見た目が似ているため、「なんとなく目が小さくなった」「昔より眠そうに見える」といった違和感だけでは判断できないことが多いのです。
眼瞼下垂症と一重まぶたとの違い

ここでは、両者の「原因」「症状」「改善方法」の違いを比較してみましょう。
このように、眼瞼下垂は「機能の問題」であり、一重まぶたは「形の問題」です。
特に中高年で「二重が消えて一重になった」「まぶたが下がって視界が狭い」という場合は、眼瞼下垂が進行している可能性が高く、治療対象になります。
【一重瞼の隠れ眼瞼下垂症】二重の幅に配慮した男性の眼瞼下垂症手術(切開式)
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眼瞼下垂と一重の治療法の違い

両者は見た目が似ていても、治療の目的が大きく異なります。
ここでは代表的な治療法の違いを紹介します。
眼瞼下垂の治療
眼瞼下垂の治療は、原因となる「まぶたを上げる筋肉の弱まり」を改善する手術が中心です。
代表的な方法には次のようなものがあります。
| 治療 |
内容 |
| 眼瞼挙筋前転法(挙筋短縮術) |
まぶたを持ち上げる筋肉を前方に引き出し、弱まった機能を改善する手術です。
黒目の上までしっかり開くようになり、視界が広がるだけでなく、自然な二重ラインが再形成されます。 |
| ミュラー筋短縮法 |
比較的軽度な眼瞼下垂に適応され、上まぶたの裏側(結膜側)からアプローチする手術。
皮膚に傷がつかないため、ダウンタイムが短く、美容的にも優れています。 |
保険適用と自費診療の違い
「視野が狭く生活に支障がある」などの機能的問題が認められれば、形成外科で保険適用が可能です。一方、見た目の改善を目的とした美容的施術は自費診療になります。
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一重まぶたの治療
一重まぶたの場合は、まぶたの皮膚構造を整える美容的な治療が中心です。
筋肉は正常なので、手術の目的は「二重のラインを作る」ことです。
| 治療 |
内容 |
| 埋没法(二重埋没術) |
糸でまぶたを留めて二重を作る方法。ダウンタイムが短く、自然な仕上がりです。 |
| 切開法(二重切開術) |
皮膚を切開して二重のラインを永久的に形成します。皮膚の厚みや脂肪を調整できるため、くっきりした二重を希望する方に適しています。 |
| その他の方法 |
脂肪取り、眼窩脂肪の調整などを併用することで、目の印象をより明るく見せることも可能です。 |
このように、眼瞼下垂の治療は「まぶたを上げる力の改善」が目的であり、一重の治療は「見た目のライン形成」が目的です。
もし「視界が狭い」「額に力を入れないと目が開かない」といった症状がある場合は、単なる美容施術ではなく、形成外科的な治療を検討する必要があります。
まとめ
- 眼瞼下垂と一重まぶたは、見た目が似ているために混同されやすいものの、原因も治療法も大きく異なります。
・一重まぶたは「構造の違い」であり、筋肉の機能は正常。
・眼瞼下垂は「筋肉の機能低下」による「まぶたの病気」。
もし、以前よりまぶたが下がってきた、二重のラインがなくなってきた、頭痛や肩こりを伴うといった症状がある場合は、眼瞼下垂が進行している可能性があります。
- 正しく診断を受けることで、視界の改善だけでなく、若々しい表情を取り戻すことができます。
美容目的の二重手術では改善しきれないケースもあるため、形成外科や眼瞼下垂専門の医療機関で相談することをおすすめします。
眼瞼下垂症と一重まぶたの違いを正しく理解し、「まぶたの筋肉機能を治す治療」を選ぶことで、根本的な改善と自然な若々しさを取り戻せます。
「見た目の問題」ではなく「機能の問題」であると気づくことが、治療の第一歩です。