
「まぶたが重い」「視界が狭く感じる」「昔より目の印象が変わった気がする」。
このような悩みを感じて病院で相談したものの、「眼瞼下垂ではありません」と言われて戸惑う方は多くいらっしゃいます。
実際、眼瞼下垂は症状の進行度合いや筋肉の働き方によって、軽度〜重度まで幅広い段階があり、軽度のうちは「診断基準に満たない」とされることも珍しくありません。
しかし、「下垂ではない」と診断されても、日常生活で支障を感じたり、見た目に明らかな変化を感じたりする場合は、早めに対処した方がよいケースもあります。
今回の記事では、眼瞼下垂と診断されなかった理由、正しい判断基準、そして軽度下垂に適した代表的な治療法である挙筋前転法(切開法)について詳しく解説します。
ご自身の症状を正確に理解し、最適な治療に進むための指針としてお役立てください。
眼瞼下垂と診断されなかった理由
1.医学的な診断基準に達していない
眼瞼下垂とは?
上まぶたを上げる「眼瞼挙筋」や「ミュラー筋」の働きが弱まり、黒目の上を覆うようにまぶたが下がってしまう状態を指します。
 
医師が診断する際は、以下のような客観的指標が用いられます。
- MRD1(Margin Reflex Distance 1):瞳孔の中心から上まぶたの縁までの距離が「2mm以下」であれば下垂と判断されることが多い
- 挙筋機能の可動域:まぶたを閉じた位置から最大に開けた位置までの動きが「8mm未満」だと機能低下とみなされる
- 眉の動き(代償運動):眉を上げて無理に目を開けようとする動きがあるか
これらのうち複数が確認されない場合、医師は「眼瞼下垂ではない」「軽度で経過観察」と判断することがあります。
つまり、数値的には正常範囲内だが、本人の感覚的には下垂しているというグレーゾーンが存在するのです。
2.保険診療上の条件に該当しなかった
保険適用で眼瞼下垂手術を受けるためには、「まぶたが下がって視野が狭くなり、生活に支障がある」ことが求められます。
この“機能的障害”が確認されなければ、たとえ見た目や感覚に違和感があっても「美容目的」とされ、保険適用外となります。
そのため、軽度の眼瞼下垂や加齢によるたるみの場合、健康保険ではなく自費治療(美容外科領域)としての手術が必要になることがあります。
【眼瞼下垂の保険適用の条件】自費診療との違い/美容外科によりデザインも配慮
3.他の要因による「まぶたの重さ」の可能性
眼瞼下垂に似た症状を引き起こす別の要因もあります。
- 皮膚のたるみ(上眼瞼皮膚弛緩症):皮膚が余って視界を覆う状態
- 眉毛下垂:眉の位置が下がり、まぶたが重く見える
- 脂肪の萎縮や眼窩構造の変化:加齢による骨格や脂肪の減少で目元がくぼんで見える
- 神経・筋疾患(重症筋無力症など):筋肉や神経の異常でまぶたが下がる
 
こうした要因を見分けるには、形成外科や眼形成外科など、目周りに特化した医師の診察が重要です。
眼瞼下垂かどうかの判断基準

1. 客観的評価 ― 医師が確認するポイント
医師は見た目の印象だけでなく、筋肉の働きや視野の状態を総合的に判断します。
代表的なチェック項目は以下の通りです。
| 判断項目 | 内容・目安 | 
| MRD1(黒目の露出量) | 2mm以下なら下垂傾向 | 
| 挙筋機能 | 8mm未満で低下と判断される | 
| 視野検査 | 上方視野が20度以上狭い場合は機能障害 | 
| 額の代償運動 | 眉を上げて目を開ける癖がある | 
| 眼精疲労の有無 | 長時間の作業で目が疲れやすい・頭痛が出る | 
 
これらのうち複数に当てはまる場合は、軽度でも「眼瞼下垂の傾向がある」と考えられます。
2. 自覚症状 ― 患者自身が感じる変化
患者が訴える症状も大切な判断材料です。
たとえば次のような違和感がある場合、機能的な下垂を疑うべきです。
- 朝より夕方の方が目が重い
- おでこや眉が疲れる
- 写真を撮ると片目だけ小さく見える
- アイメイクが崩れやすい
- 他人から「眠そう」と言われる
 
このような変化は、筋肉の微妙な衰えによる軽度下垂のサインかもしれません。
 
眼瞼下垂でなかった場合の注意点

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1.原因が異なる場合は治療法も異なる 例えば皮膚のたるみ(上眼瞼皮膚弛緩症)が主因なら、筋肉を操作するより皮膚を引き上げる手術(眉下切開など)が適しています。
 反対に、筋肉の機能が落ちているなら挙筋前転法が最も効果的です。
 このように、原因の見極めを誤ると「手術したのに改善しない」という結果にもつながります。
 したがって、形成外科または眼形成外科で筋肉・皮膚・脂肪のすべてを総合的に診断してもらうことが重要です。 
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2.セルフマッサージは避ける 「自分でまぶたを引き上げる」「マッサージで改善する」という情報を鵜呑みにするのは危険です。
 上まぶたの皮膚は薄く、無理に刺激すると皮膚が伸びて逆にたるみが進行することがあります。
 医学的な根拠に基づいたケアを行うことが大切です。
 
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3.経過観察も立派な「治療の一部」 軽度の場合、すぐに手術が必要とは限りません。
 ただし、加齢や筋力低下によってゆっくり進行することが多いため、1〜2年ごとに経過を記録し、変化を客観的に把握することが推奨されます。
 「以前より黒目の露出が減った」「目が開けにくくなった」と感じたら、再度診察を受けるタイミングです。
 
【軽度の眼瞼下垂 治療】くぼみ目修正術(挙筋前転法+眼窩脂肪移動術)で改善
眼瞼下垂症手術(切開式)の事例一覧はこちら
軽度の眼瞼下垂 代表的な治療法 ― 挙筋前転法(切開法)

軽度の眼瞼下垂においても、まぶたを開ける筋肉そのものが弱まっている場合は、挙筋前転法(きょきんぜんてんほう)が最も根本的な治療です。
ここでは、手術の目的・流れ・効果・ダウンタイムなどを詳しく説明します。
1.手術の目的と仕組み
眼瞼下垂は「眼瞼挙筋腱膜(けんまく)」が伸びてしまい、まぶたを持ち上げにくくなる状態です。
挙筋前転法では、この腱膜をまぶたの支点(瞼板:けんばん)に再固定または短縮し、筋肉の力を正しく伝わるようにします。
これにより、自然な二重ラインを形成しながら、目の開きを改善できます。
2.手術の流れ
- デザイン・マーキング
 まぶたのラインと二重の位置を慎重にデザインします。
- 局所麻酔
 痛みを最小限に抑え、リラックスした状態で行います。
- 皮膚切開
 まつ毛の少し上を切開し、挙筋腱膜を丁寧に露出させます。
- 挙筋の短縮・前転
 弱まった腱膜を短く縫い縮め、まぶたを持ち上げる力を再構築します。
- 縫合・固定
 二重ラインが自然に見えるように調整しながら皮膚を縫合します。
 
手術時間は片目で約30〜40分程度。両目同時に行うことも可能です。
3.ダウンタイム・回復経過
- 腫れ・内出血:1〜2週間で軽快
- 抜糸:5〜7日目
- メイク再開:抜糸翌日以降から軽めのアイメイク可
- 自然な仕上がり:1〜3ヶ月程度で完成
 
腫れの程度や仕上がりの左右差には個人差がありますが、術後の経過を見ながら微調整を行うことも可能です。
4.挙筋前転法のメリットとリスク
メリット
- 根本的に「まぶたを上げる力」を改善できる
- 二重ラインを同時に整えられる
- 再発が少なく、長期的な安定性が高い
 
リスク・注意点
- 腫れや内出血が一時的に出る
- ごく稀に左右差や二重ラインの不均一が生じる
- まれに再調整が必要になる場合がある
 
 Dr.三沢
 Dr.三沢
医師が挙筋の働きを正確に把握し、バランスを調整することで、自然な仕上がりを目指せます。
 
 
 
横浜エムズクリニックの眼瞼下垂治療はこちら
まとめ
- 眼瞼下垂と診断されなかったとしても、「まぶたが重い」「視界が狭い」と感じるなら、軽度下垂の可能性を疑うことが大切です。
 診断基準に届かない場合でも、日常生活で支障が出ているなら、専門医で再評価を受ける価値があります。
- そして、根本的な改善を目指すなら、挙筋前転法(切開法)が最も効果的です。
 筋肉そのものを修復することで、見た目だけでなく機能的にも快適な目元を取り戻すことができます。
- 「下垂ではない」と言われても、違和感を我慢する必要はありません。
 自分の目元に合った治療法を理解し、信頼できる医師に相談することで、自然で明るい表情を取り戻すことができます。