
目の下のクマやたるみは、顔全体の印象を大きく変えてしまうパーツです。「疲れて見える」「老けて見える」「メイクで隠れない」など、年齢による悩みが表れやすい部分で、20代の頃から気になってくる方も少なくありません。特に近年はオンライン会議や写真撮影の機会が増え、目元の印象に敏感になる女性が増えています。
そのなかで、手軽な治療として人気なのが「経結膜脱脂(=脱脂)」ですが、施術後に“くぼみ”が生じてしまうケースも一定数あります。「膨らみは取れたのに、余計に老けたように見える」「影が濃くなって後悔してしまった」という声も珍しくありません。
今回の記事では、脱脂後にくぼみが起こる原因を専門的な視点から整理し、修正治療の注意点、そして裏ハムラ法がなぜ根本治療としておすすめされるのかを詳しく解説します。
目の下のクマたるみ取り 脱脂後のくぼみができる原因

脱脂とは?
脱脂は、まぶたの裏側(結膜側)から膨らんだ眼窩脂肪を取り除く施術です。皮膚に傷がつかず、ダウンタイムも短いという利点が重視され、若い世代や仕事が忙しい女性にも人気があります。
しかし、脱脂は「脂肪を減らす」ことが目的であり、脂肪を“再配置して整える”施術ではありません。目の下のクマの原因は、脂肪の量だけでなく、靭帯や筋肉、骨格、皮膚のハリ低下など複数の要素が重なっているため、「脂肪を取るだけ」では改善しきれないケースが多いのです。
くぼみができやすい人とは?
以下の特徴を持つ方は、脱脂後にくぼみが生じるリスクが高い傾向にあります。
- もともと脂肪が少なく、膨らんでいる部分だけが局所的に目立つタイプ
脂肪を取ると全体の凹凸バランスが崩れやすい。
- 眼窩が深い“彫りが深い顔立ち”の方
脂肪を減らすと、骨格による影がより露出してしまう。
- 30〜60代で皮膚のたるみ・ハリ不足がある方
脂肪を失うことで皮膚が余り、影が強調されて見える。
- 頬の脂肪が少なく、ゴルゴ線が出やすいタイプ
脂肪を支える構造が弱いため、脱脂後に凹みやすい。
これらに該当する方は、脱脂単独よりも「脂肪を移動させる治療(=裏ハムラ法)」の方が向いているケースが多くなります。
脱脂後に窪む原因

脱脂後にくぼみが起きる理由は、以下の複数の要因が複雑に絡んでいます。
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1. 脂肪の取りすぎ
最も多い原因が「過剰な脂肪除去」です。膨らみを取りたいあまり、必要以上に脂肪を取り除いてしまうと、不足したボリュームが凹みとして残ります。脂肪は一度取りすぎると元には戻りません。
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2. ORL(眼窩頬靭帯)による段差が強調される
目の下には、眼窩脂肪を押さえる役割の靭帯(ORL)が存在します。脂肪を取るだけでは、この靭帯がつくる段差は解消できず、影がより濃く見える場合があります。
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3. 加齢変化により皮膚・筋肉が下垂している
たるみがある状態で脱脂すると、逆に影が浮き彫りになり、凹凸感が増します。
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4. 「膨らみ+凹み」が同時に存在するタイプだった
実は多くの方が、膨らみの下に“凹み”を併せ持っています。脱脂では凹みを埋めることができないため、「膨らみが消えて凹みだけが残る」という結果になってしまうのです。
脱脂後にくぼみができた場合の修正治療の注意点

脱脂後のくぼみを改善するためには、慎重な治療選択が必要です。以下のポイントを理解しておくと失敗を防げます。
1.脂肪注入は万能ではない
脂肪注入は凹みを埋めるための一般的な方法ですが、以下のリスクがあります。
- 定着率が不安定(20〜70%と個人差が大きい)
- しこり・凸凹が出る可能性
- 多く注入すると不自然になりやすい
- 痩せると再度くぼむことがある
- 修正が難しい
特に目の下は皮膚が薄く、他の部位よりもデメリットが強調されがちです。
2.ヒアルロン酸は一時的で、慎重さが必要
ヒアルロン酸は即効性がありますが、
- 青く透ける(チンダル現象)
- むくむことで逆に膨らんだ印象になる
- 長期的に残留することがある
などのリスクがあり、目の下の微調整には高度な技術が求められます。
3.裏ハムラ法による修正は有効だが、医師の技量が大きく影響
脱脂後の修正裏ハムラは、通常の裏ハムラより難しくなります。
- すでに脂肪が部分的に欠損している
- 組織の癒着が強い
- 脂肪の移動量・配置の判断が難しい
そのため、修正治療の経験が豊富な医師を選ぶことが何より重要です。
くぼんだ後に裏ハムラ法が有効か?当初から裏ハムラ法をおすすめする理由

裏ハムラ法とは?
裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)は、膨らんで見える脂肪を単に「取る」のではなく、凹み部分へ移動して再配置する治療です。
脂肪を活かしながら段差をなだらかにし、自然で若々しい目元をつくることができます。
目の下のクマたるみ取りに裏ハムラ法を第一選択とする理由

裏ハムラ法が推奨される理由は数多くあります。
- 凹み・影の根本原因を解消できる
脱脂では解決できない「影をつくる段差(ORL)」を、脂肪移動によって滑らかにできます。
- 老け見えしづらい
脂肪を残しながら移動するため、必要なボリュームを保てます。
- くぼみやゴルゴ線も同時に改善
裏ハムラ法は脱脂では改善できない凹み・溝にもアプローチできます。
- 脱脂後のくぼみ修正にも有効
脂肪が残っていれば再配置できますし、脂肪量が不足している場合でも、他の治療と組み合わせて改善が可能です。
- 自然な仕上がりで長期維持がしやすい
自分自身の脂肪を活かすため、不自然な膨らみや硬さが出にくく、長期間安定しやすいのも特徴です。
目の下のクマたるみ取り 脱脂のへこみで後悔・失敗しない10年後も見据えたオススメ治療
施術事例【60代/女性 他院修正 裏ハムラ法で膨らみ改善】

今回ご紹介するのは、過去に下まぶたのたるみ取り手術を受けたことがある方の、他院修正症例です。また、本症例は裏ハムラ法の適応や限界が分かりやすいケースでもあります。裏ハムラ法は皮膚側を切開せずに行うため、1.目の下の皮膚や筋肉のたるみ、2.外側部分の脂肪の突出については、十分な改善が難しいという特徴があります。
一般的に「下まぶたのたるみ取り」は、皮膚の表側を切開して行い、次のような工程を組み合わせて進めることが多いです。
1.ハムラ法による眼窩脂肪の移動
2.眼輪筋の吊り上げ・固定
3.ミッドフェイスリフト
4.余剰皮膚の切除


この症例では、下まつ毛のすぐ下に明らかな手術痕が認められ、何らかの手術が行われていたことは間違いない状態でした。しかし、目の下には依然として眼窩脂肪による膨らみが残っており、過去の手術で本当にハムラ法(眼窩脂肪移動)が行われていたのかどうかは判断が難しい状況でした。
※患者さんご本人は、前医からハムラ法を行ったと説明を受けていたとのことです。
他院で行われた表ハムラ法を、再度皮膚側から切開して修正することには慎重な判断が求められます。その理由は、下眼瞼外反症のリスクが高まるためです。一度外反症が生じてしまうと、改善が非常に困難になることが多く、安易な再手術は避けなければなりません。
そこで今回は、これまでの手術歴や現在の状態を踏まえ、患者さんと「どこをゴールとするか」を丁寧に話し合いました。「完璧な仕上がりでなくてもよいので、目の下の膨らみだけは改善したい」という現実的な目標を共有した結果、選択した治療が裏ハムラ法でした。
Dr.三沢
裏ハムラ法では、皮膚や眼輪筋のたるみ、外側部分の脂肪突出の改善には限界がありますが、それでも術前と比べると目の下の膨らみは軽減し、すっきりとした印象の目元になりました。結果として、患者さんにもご満足いただけた症例です。
他院による下まぶたのたるみ取り後の修正【外反症のリスクを考慮して裏ハムラ法で膨らみ改善】
よくあるご質問
クマ取り後の脱脂術は再発しやすいですか?
脱脂術は、目の下のふくらみの原因である「余分な眼窩脂肪」を取り除く治療です。そのため、一度適切に脂肪を除去できれば、同じ脂肪が再び膨らむという意味での“再発”は比較的少ない治療です。
しかし、まったく再発しないわけではありません。以下のようなケースでは、時間とともにふくらみが再度目立ってくる可能性があります。
* 取り残しがあった場合
脂肪が部分的に残ると、数年後に再びふくらみとして現れることがあります。
* 加齢による皮膚のゆるみ・支持靭帯の緩み
脂肪は減っても、皮膚や筋膜がゆるむと影になり、再発したように見えます。
* 元々脂肪量が多かった方
取り除いても加齢変化とともに残った脂肪が前に押し出されてくることがあります。
「治療直後は良かったのに、数年後にまた気になってきた」という方は、上記の理由が多いです。
そのため、再発リスクを下げたい方は、脂肪の移動(裏ハムラ法)を検討するクリニックが増えています。
クマたるみ取りの脱脂後にくぼみができる確率はどれくらいですか?
脱脂は「脂肪を取る」施術のため、過度に除去されたり、もともとボリュームが少ない方の場合、一定の割合で“くぼみ”が出ることがあります。
特に以下の条件ではくぼみが生じやすくなります。
* 30〜60代で皮膚の弾力が低下している方
皮膚のハリが不足しているため、除脂後に影が出やすい。
* 元々頬が痩せている・顔全体がスリムな方
脂肪が少ないため、脱脂後にボリューム不足が強調される。
* 脂肪を取りすぎたケース(外科的な術式の問題)
医師の技術やデザインの違いによって生じることがあります。
確率はクリニックや患者さまの状態によって異なりますが、40代以降では脱脂のみだと高い確率でくぼみが生じやすい傾向があります。
そのため、多くの美容外科では「脱脂だけで美しく仕上がる方は20〜30代まで」と説明しています。
脱脂後に脂肪注入をするのが一般的ですか?
近年は、脱脂と脂肪注入(または脂肪再配置)を組み合わせる治療が一般的になりつつあります。
理由としては以下のとおりです。
* 脱脂だけだとくぼみや影が出やすい
* ボリュームの調整をしながら自然な目元に仕上げられる
* 年齢による皮膚の下垂や組織の変化までカバーできる
特に30〜60代では、脱脂+脂肪注入(または裏ハムラ法)が標準的治療と考えるクリニックが多いです。
ただし、全員に脂肪注入が必要というわけではありません。
以下の方は脱脂のみでも自然に仕上がることがあります。
* 10〜20代で皮膚のハリが十分ある
* 目の下に「膨らみ」が強く、「くぼみ」が少ない
* 骨格的にボリューム不足が目立たない
施術の選択は、年齢・皮膚の質・骨格のバランスによって大きく変わります。
目の下のクマたるみ取りに脱脂を選択するのはやめた方がいいですか?
脱脂が悪い治療というわけではありません。
ただし、患者さまの状態によって適応が大きく分かれることが最も重要なポイントです。
▶ 脱脂が向いている方
* 20〜30代で皮膚のハリが十分ある
* 目の下の“膨らみのみ”が主な原因で、くぼみがほとんどない
* 顔全体の脂肪が適度にあり、ボリューム不足が目立たない
▶ 脱脂を避けた方がいい・単独では不十分な方
* 30〜60代で膨らみとくぼみが同時にある
* 頬が痩せている/骨格的に影が出やすい
* 「自然に若返りたい」仕上がりを希望する
* くぼみリスクを避けたい
このようなケースでは、裏ハムラ法(脂肪再配置)が第一選択になることが多いです。
裏ハムラ法は脂肪を「取る」のではなく「移動して均す」ため、くぼみを作りにくく、自然で若々しい仕上がりになります。
まとめ
- 脱脂は一見手軽で魅力的に思えますが、構造を理解せずに行うと「くぼみ」「老け見え」「影の悪化」を招いてしまうことがあります。
- 一方、裏ハムラ法は脂肪を活かしながら配置し直すことで、膨らみだけでなく凹みや影の原因まで総合的に改善できる治療です。
- そして最も大切なポイントは、『脱脂後にくぼみができた場合でも、裏ハムラ法で改善できる可能性は十分にある』ということです。
- ただし、修正治療は難易度が高いため、症例数が多く、裏ハムラ法を専門的に行っている医師を選ぶことが大切です。