
「皮膚の下にしこりができた」「触ると柔らかい塊があるけど痛くない」そんな症状に気づいて、「これって何科に行けばいいんだろう?」と迷われた方も多いのではないでしょうか。実は、そのしこりの正体が「脂肪腫(しぼうしゅ)」であるケースは少なくありません。
脂肪腫は良性の腫瘍であり、命に関わるものではありませんが、放置して自然に治ることは基本的にないため、適切な診断と治療が必要です。しかし、いざ医療機関にかかろうとすると、「皮膚科?形成外科?整形外科?」と迷ってしまうのが現実です。
今回の記事では、脂肪腫に気づいたときにどの診療科に行くべきか、皮膚科と形成外科の違いや、脂肪腫治療において形成外科をおすすめする理由について、詳しく解説いたします。
脂肪腫を確実に取り除いて再発や見た目の仕上がりにも配慮したいなら、形成外科がおすすめです。理由を順を追ってご説明します。
脂肪腫とは

脂肪腫とは?
脂肪腫は、皮膚の下の脂肪組織が異常に増殖してできる良性の軟部腫瘍です。大きさは数mmから10cm以上になることもあり、多くは柔らかく、ゆっくりと成長します。押すと動くことが多く、通常は痛みを伴いませんが、神経を圧迫するような位置にできた場合や炎症を起こした場合には痛みを感じることもあります。
脂肪腫は全身どこにでも発生しますが、特に背中・肩・首・腕・太ももなど皮下脂肪が豊富な部位にできやすい傾向があります。1個だけできる場合もあれば、複数できることもあります。
脂肪腫が悪性化する可能性は極めて低いものの、大きくなると見た目や動きの制限の原因となることもあるため、早めの治療が望まれます。
脂肪腫は一般的に何科に行けばいい?

脂肪腫が疑われる場合、まず悩むのが「どの診療科にかかればいいのか」という点です。主に以下の選択肢が考えられます。
- 皮膚科
- 形成外科
- 整形外科(部位によって)
- 外科(総合病院など)
ただし、すべての診療科が同じ治療を行っているわけではありません。たとえば、皮膚科は「診断まで」で手術は行わず他科へ紹介するケースも多く、整形外科では機能重視の観点から深部の脂肪腫を扱う場合もあります。
美容的な観点や再発防止まで踏まえた手術を希望するなら、形成外科が有力な選択肢になります。
皮膚科・形成外科におけるそれぞれの特徴・脂肪腫治療の違い

皮膚科の特徴
皮膚科は、皮膚・毛髪・爪・粘膜などの疾患を専門とする診療科です。脂肪腫が皮膚のすぐ下にある場合には、皮膚科でも対応できることがあります。特に小さく、明らかに良性と判断されるものについては、外来で簡単に切除されることもあります。
しかし皮膚科の中でも外科的手術に対応していないクリニックも多く、診断ののちに形成外科や外科へ紹介されるケースがよく見られます。
形成外科の特徴
形成外科は、皮膚の表層からその下の組織に至るまでの異常や欠損、腫瘍などを手術によって機能的・整容的に改善する専門科です。顔や体の目立つ場所のしこり、再発しにくいように取り除きたい脂肪腫、瘢痕が残りにくい縫合法など、美容と医療の両面を意識した治療が可能です。
形成外科では腫瘍の深さ・位置・血管や神経との関係を評価した上で、必要に応じて画像診断(エコーやMRI)を行うなど、より高度な治療計画を立てることができます。
脂肪腫治療は形成外科をおすすめする理由

脂肪腫の治療には、次のような理由で形成外科が最も適しているといえます。
項目 |
内容 |
美容的な仕上がりに配慮 |
顔や首などの目立つ場所にできた脂肪腫は、傷跡が残るかどうかが非常に気になります。形成外科では、皮膚のしわに沿った切開、縫合技術の工夫、術後のケア方法など、美容面にも配慮した治療が行われます。 |
根治手術で再発を防ぐ |
脂肪腫は、皮下の袋状構造(被膜)ごとしっかり摘出しなければ再発することがあります。形成外科では被膜まで確実に切除する手術が基本であり、再発リスクを抑えるための治療に長けています。 |
神経・血管への影響に配慮 |
神経や血管に近い部位の脂肪腫を切除するには、高度な解剖知識と慎重な手技が必要です。形成外科医は顔面や手指など細かい部位の手術に熟練しており、安全性にも優れています。 |
他の腫瘍との鑑別が可能 |
脂肪腫に見えても、脂肪肉腫(悪性腫瘍)や粉瘤など別の病変であることもあります。形成外科では、疑わしい症例に対して適切な検査・病理診断を実施し、万が一の対応にも備える体制が整っています。 |
形成外科で行う主な治療内容・流れ

形成外科での脂肪腫治療は、以下のような手順で行われるのが一般的です。
- 初診・診察
問診・視診・触診に加え、必要に応じてエコーやMRIなどの画像検査を行い、脂肪腫かどうか、良性か悪性かの判断をつけます。
- 手術の計画と説明
腫瘍の大きさ・位置・深さに応じて、局所麻酔か全身麻酔を選択します。顔などの場合は傷跡が目立ちにくいデザインで切開計画が立てられます。
- 手術(外来または日帰り)
・局所麻酔で行う日帰り手術が一般的です
・切開 → 被膜ごと脂肪腫を摘出 → 止血 → 皮膚縫合
・大きい脂肪腫や深部の腫瘍の場合は、入院や全身麻酔が必要なこともあります
- 術後のフォローアップ
縫合部の抜糸や、傷の赤み・盛り上がりを予防するケアが行われます。形成外科では、傷跡がきれいに治るように配慮されたアフターケアも特徴です。
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形成外科が扱う皮膚腫瘍

脂肪腫以外にも、形成外科では次のような皮膚・皮下腫瘍の切除治療を多く行っています。
- 粉瘤(アテローム)
- 石灰化上皮腫
- 血管腫
- 母斑(ホクロ)
- 脂腺母斑
- 皮膚線維腫
- 皮膚がん(基底細胞がん・有棘細胞がんなど)
これらの皮膚腫瘍は、見た目が脂肪腫と似ているものも多く、正確な診断が必要です。
Dr.三沢
「良性だと思っていたが、実は悪性だった」という例もゼロではありません。その意味でも、腫瘍治療を専門とする形成外科の判断は重要です。
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まとめ
- 脂肪腫ができたとき、「どの科に行けばよいのか」と迷うのは当然のことです。しかし、確実な診断・再発しにくい治療・目立たない仕上がりを望むなら、形成外科が最も適した選択です。皮膚科は診断まではできることが多いですが、手術は別の医療機関に紹介されるケースも少なくありません。形成外科なら、一貫した対応が可能で、傷跡や術後の見た目にも配慮してもらえます。
- 脂肪腫は自然には消えないため、「気になった時点で行動すること」が大切です。今気になるしこりがあるなら、形成外科で診てもらいましょう。脂肪腫をしっかり治療し、不安のない日常を取り戻すために、専門医の判断を仰ぐことが第一歩です。