
年齢を重ねるにつれて、ふと鏡を見たときに「目の下のふくらみや影が濃くなってきた」「疲れて見られることが増えた」と感じる30〜60代の女性は少なくありません。目の下のクマやたるみは、メイクで隠しきれず、実年齢以上に見られてしまう原因にもなります。
目元の印象を明るく若々しく保つために、日常的にまつ毛エクステ(マツエク)やまつ毛パーマを取り入れている方も多いはずです。そこで直面しやすい疑問が、「マツエクをつけたままでもクマ取り手術は受けられるのか?」「手術後、マツエクやパーマはいつから再開できるのか?」という点です。
クマ取り手術は非常にデリケートな目元を扱う治療です。手術当日の安全性や術後のダウンタイム、美しい仕上がりを守るためには、施術とまつ毛ケアのスケジュール管理が欠かせません。クマ取りとマツエクの関係性や注意点を事前に正しく把握し、不安を解消したうえで安心して治療に臨んでいきましょう。
マツエクしたままクマ取り手術は可能?

結論から申し上げますと、マツエクをつけた状態のままでもクマ取り手術自体を受けることは原則として可能です。ただし、医師としては「事前にオフ(除去)してから手術に臨むこと」を強く推奨しています。
施術そのものが物理的に不可能というわけではありません。しかし、目の周囲の処置を行うにあたって、マツエクが付いていることによる医学的なデメリットやリスクが複数存在するためです。
具体的には、手術中に以下のような懸念事項が発生します。
- 眼球保護器具(コンタクトシールド)挿入時の摩擦:手術中に眼球を保護するための特殊な板を装着する際、マツエクのエクステや接着剤が擦れて自まつ毛を痛めたり、器具の装着に支障をきたしたりすることがあります。
- 消毒液による接着剤(グルー)の劣化:手術部位を無菌状態にするため、目の周りを強力な消毒液で広範囲に清拭します。この消毒液や水分、手術中の生理食塩水によってグルーが急速に劣化し、施術中にボロボロと脱落するリスクが高まります。
- 脱落した毛やグルーによる角膜損傷・感染症:術中に取れたエクステの毛やグルーの破片が結膜嚢(目の中)に入り込むと、角膜を傷つけたり、創部に迷入して感染症を引き起こす危険性があります。
- 手術器具への引っ掛かり:微小な血管を止血する電気メスや精密なピンセット、縫合糸などがまつ毛に引っ掛かると、安全かつ正確な手術の妨げになります。
万全を期して手術の安全性とクオリティを最優先にするならば、一度サロンでオフしていただくのが確実です。どうしても都合がつかず外せない場合は、事前に執刀医へ必ず申告し、術中に一部または全部が取れてしまう可能性をあらかじめ承諾していただく必要があります。
「せっかく付けたばかりだからもったいない」と感じるお気持ちは大変よく分かります。しかし、美容外科手術において最優先すべきは「感染リスクの排除」と「視野の確保による安全性の担保」です。万が一の角膜損傷を防ぐためにも、手術の数日前までにマツエクをオフし、自まつ毛を休ませた状態でご来院いただくことをおすすめします。
マツエクをしている方が施術を受ける際の注意点

マツエクをされている方がクマ取り手術を検討する場合、事前の準備から当日の心構えまで、いくつか把握しておくべき重要な注意点があります。
安全管理の観点から、マツエク装着中の方は以下のポイントを必ず確認しておきましょう。
- サロンでのオフは手術の2〜3日前までに済ませる:直前のオフは、リムーバーの薬剤による目元の皮膚炎や結膜の充血を引き起こしている可能性があり、手術時の刺激や腫れを助長する恐れがあります。
- 自まつ毛の抜け毛・まぶたの炎症に気をつける:マツエクを長期継続していると、まぶたの縁に皮脂汚れが溜まるマイボーム腺機能不全や、微細な炎症が起きていることがあります。清潔を保ち、健康な目元環境で手術日を迎えてください。
- クリニックの事前規定を必ず確認する:施設によっては「マツエク完全オフが手術の絶対条件」と規定されているクリニックもあります。カウンセリング時にマツエクの有無に関するルールを必ず担当医やスタッフに確認してください。
- 術中にマツエクが外れても補償はされない:マツエクを装着したまま手術を受け、処置中の消毒や器具の接触によって毛が抜け落ちたり折れたりしても、クリニック側の医療事故や過失とはみなされず、補償の対象外となるのが一般的です。
- 下まつ毛のエクステは確実にオフする:クマ取り手術は下まぶたの裏側(結膜側)または皮膚側を直接操作します。下まつ毛のエクステは手術部位の直近にあるため、術野を著しく妨げ、不衛生の原因となります。上まつ毛以上に厳密な除去が求められます。
これらの注意点をあらかじめ理解しておくことで、当日クリニックで慌てることなく、清潔かつ安全な状態で手術室に入ることができます。ただし、下まつ毛のエクステについては術野を著しく妨げ、不衛生の原因となるため事前の完全除去が必須です。ルールと事前準備をしっかり整えておくことが納得のいく手術結果につながります。また、万全の状態で手術を受けることが術後の早い回復を促します。
まつ毛エクステを外した直後は、ご自身の目元が寂しく見えて不安に感じるかもしれません。しかし、クマ取り手術によって目元のクマや影、たるみが根本的に改善されると、目元の明るさが蘇り、自まつ毛だけでも十分に若々しい印象を取り戻せます。手術前後のわずかな期間だけ、自まつ毛をいたわる期間と捉えてみてください。
クマ取り手術後、マツエクやまつ毛パーマはいつからしてもいい?リペアの時期は?

手術を無事に終えたあと、いつからマツエクやまつ毛パーマを再開できるかという点も非常に重要なテーマです。
「術後1ヶ月間」はマツエクやまつ毛パーマを控えていただくのが基本となります。部分的なリペア(付け足し)であっても同様です。
1ヶ月という期間を設ける理由は、傷口の治癒過程と目元の安静が必要不可欠だからです。術後の組織は以下のような回復プロセスをたどります。
- 術後1週間(急性炎症期):腫れ、内出血、組織の傷口がもっとも不安定な時期です。この期間にまつ毛を引っ張ったり、薬剤を塗布したりする行為は傷口の離開や感染を招くため厳禁です。
- 術後2〜3週間(組織修復期):表面的な傷口はふさがり、大きな腫れは落ち着いてきますが、皮膚の下や結膜の深部では組織の癒着と再構築が進んでいます。まぶたを強く反転させたり引っ張ったりする外圧にはまだ耐えられません。
- 術後1ヶ月(安定期):組織の強度が元の状態近くまで回復し、目元の違和感や軽度のむくみもほぼ消失します。この段階に達して初めて、サロンでの施術に耐えうる状態となります。
サロンでの施術では、アイリストがまつ毛を固定するためにテープをまぶたに密着させて強く引き上げたり、グルーやパーマ液などの強い化学成分を目のキワぎりぎりに塗布したりします。これらは回復途中のデリケートな組織にとって極めて強い物理的・化学的刺激となります。
仕上がりの美しさと安全を両立するためにも、完全な付け替えもリペアも、1ヶ月検診で医師の診察を受けて問題がないことを確認してからご予約ください。
「下まぶたの手術なのだから、上まつ毛のマツエクならすぐに付けても大丈夫なのでは?」と考える患者様が非常に多くいらっしゃいます。しかし、上まつ毛の施術であっても、まぶた全体をテープで引っ張られたり、施術者の手が下まぶたに強く置かれたりします。目元全体がひとつの解剖学的ユニットですので、上まつ毛であっても術後1ヶ月は待つのが鉄則です。
ヒアルロン酸注入・脱脂・裏ハムラ法の施術でマツエク再開の時期を比較

一口に「クマ取り」と言っても、注入治療から切開を伴う外科手術まで、術式によって組織への侵襲(ダメージの大きさ)は全く異なります。術式による組織への負担の違いを無視して無理に再開すると、予期せぬトラブルにつながる恐れがあります。そのため、マツエクやまつ毛パーマを再開できる時期も術式ごとに区別して考える必要があります。
代表的な3つのクマ取り治療(ヒアルロン酸注入、経結膜脱脂術、裏ハムラ法)について、侵襲の程度とマツエク再開目安を整理しました。
各術式における特徴と理由を詳しく解説します。
ヒアルロン酸注入とは?
ヒアルロン酸注入:皮膚を切開しないため傷の治癒を待つ必要はありませんが、注入直後はヒアルロン酸が組織に馴染んでおらず、外力によって形が崩れるリスクがあります。施術台で強く目元を押さえられることを防ぐため、最低でも1週間、可能であれば2週間あけると確実です。
経結膜脱脂術とは?
経結膜脱脂術:下まぶたの裏側を切開して余分な眼窩脂肪を取り出す施術です。糸で縫合しないケースが多く、粘膜の傷自体は1週間程度で塞がりますが、内部の傷口や毛細血管が完全に安定するには3〜4週間を要します。
裏ハムラ法とは?
裏ハムラ法:脂肪を移動させて骨膜にしっかりと縫合固定する高度な手術です。組織剥離の範囲が広く、下まぶたのテンションが変わるため、深部の固定が外れないよう極めて慎重な管理が求められます。確実に1ヶ月以上あける必要があります。
ご自身が受けた(あるいは受ける予定の)術式に合わせて、無理のないスケジュールを組み立ててください。治療内容に応じた適切な休止期間を守ることが、仕上がりの美しさと持続力を最大限に高めるポイントとなります。
表の目安期間は、あくまで「術後の経過が順調だった場合」の基準です。術後の腫れや内出血の引き具合には個人差があります。特に血管が繊細な50〜60代の方は内出血が長引く傾向がありますので、カレンダーの日数だけで機械的に判断せず、ご自身のまぶたの腫れや赤みが完全に落ち着いているかを目安にしてください。
クマ取り後のマツエク・まつ毛パーマのアフターケア

ダウンタイムが明けてマツエクやまつ毛パーマを再開した後も、目元への細やかなアフターケアを怠らないことが大切です。
手術によって美しく整った目の下の仕上がりを長期にわたって維持し、トラブルを未然に防ぐために、以下のケアを徹底してください。
- アイリストへ手術を受けた事実を必ず事前に共有する:予約時や施術前のカウンセリングで「○ヶ月前にクマ取り手術を受けた」と伝えてください。下まぶたを固定するテープの粘着力を弱めてもらったり、施術中に目の下に手を置く圧力を軽減してもらったりする配慮が受けられます。
- まぶたを強く擦る・引っ張るクレンジングを避ける:マツエクを落とさないように気をつけるあまり、目のキワをゴシゴシ擦るようなクレンジングは禁物です。摩擦は目元の色素沈着や皮膚のたるみを引き起こし、せっかく改善したクマの再発要因になります。
- まつ毛美容液による育毛ケアを再開する:手術前後にマツエクを休んでいた期間を活用し、自まつ毛のコンディションを高めましょう。ただし、目元に沁みやすい成分を含む美容液は術後1ヶ月を過ぎてから使用してください。
- 施術中に痛みや異変を感じたら即座に中断を申し出る:グルーの揮発成分が目に染みたり、下まぶたに圧迫痛を感じたりした場合は、我慢せずにアイリストへ伝えてください。
- 低刺激性のグルーを選択する:術後は目元の皮膚や粘膜が一時的に刺激に対して敏感になっていることがあります。再開初回のマツエクでは、ホルムアルデヒド放散量の少ない医療グレードや低刺激タイプのグルーを選ぶと安全です。
目元の摩擦や不適切なケアを放置すると、色素沈着やたるみを招き、クマが再び目立ってしまうリスクがあります。美しいまつ毛を楽しみながらも、目元に余計な負担をかけない優しい取り扱いを習慣づけましょう。日々の丁寧な扱いこそが、若々しく明るい目元をいつまでもキープする秘訣です。
クマ取り後の皮膚は、引き締まりつつ新しい状態に適応していく大切な時期です。特に下まぶたは顔の中でも最も皮膚が薄い部位ですので、日常的な摩擦ダメージは大敵です。アイメイクを落とす際は、マツエク対応の低刺激な泡クレンジングやポイントメイクリムーバーをたっぷりと含ませた綿棒を使い、決して皮膚を引っ張らない丁寧なケアを心がけましょう。
よくあるご質問
手術当日にマツエクが数本だけ残ってしまっている場合はどうすればよいですか?
無理に爪や市販のピンセットで引っ張って自己処理することは絶対におやめください。自まつ毛が根元からちぎれたり、まぶたの縁を傷つけたりして、かえって感染症の原因になります。
数本残っている程度であれば、手術当日に医師や看護師が確認し、術野の邪魔にならないよう配慮しながら清潔に処置を行いますので、そのまま触らずにご来院ください。
クマ取り手術のあと、アイメイクはいつから可能ですか?
ヒアルロン酸注入の場合は翌日から、経結膜脱脂術や裏ハムラ法の場合は術後1週間(目元の大きな腫れが引き始める時期)からアイメイクが可能です。
ただし、アイシャドウやアイライナーを落とす際に皮膚を強く擦ることは避けなければなりません。ラメやウォータープルーフなどの落としにくい化粧品は避け、お湯や軽い洗顔料でするりと落ちる低刺激なアイテムをご使用いただくのが安心です。
まつ毛パーマとマツエクでは、術後に再開できるまでの期間に違いはありますか?
基本的にはどちらも術後1ヶ月を再開の目安としており、大きな差はありません。
まつ毛パーマはエクステのように毛を接着するわけではありませんが、パーマ液という強い化学薬品をまぶたの粘膜近くに一定時間塗布し、専用のシリコンロッドをまぶたに密着させて固定します。その際の皮膚への薬品刺激やまぶたを引っ張る外力はマツエクと同等かそれ以上に強いため、組織が完全に癒着・安定する術後1ヶ月までは同様に控えていただく必要があります。
術後1ヶ月経っても目元に違和感がある場合、マツエクはしても大丈夫ですか?
カレンダー上で術後1ヶ月が経過していても、触るとチクチクするような痛みがある、下まぶたに強いしびれや引きつれ感がある、あるいは白目が赤く充血しているといった違和感が残っている場合は、マツエクの再開を見合わせてください。
回復のスピードには個人差があります。違和感を残したまま施術を受けると症状が悪化する恐れがありますので、まずは手術を受けたクリニックで担当医の診察を受け、安全の確認が取れてからサロンを予約してください。
まとめ
目元のクマやたるみを解消するクマ取り手術と、目元を華やかに彩るマツエクは、どちらも若々しく生き生きとした表情を手に入れるための素晴らしいアプローチです。
両者を上手に両立させるための要点を振り返ります。
- 手術当日は、安全管理と感染予防の観点から事前のマツエク完全オフが理想的である
- 手術中にマツエクが外れたり器具に引っ掛かったりするリスクを避けるため、下まつ毛は必ず除去する
- 術後のマツエク・まつ毛パーマの再開時期は、組織が安定する術後1ヶ月が確実な基準となる
- 侵襲の少ないヒアルロン酸注入であれば術後1〜2週間、脱脂術や裏ハムラ法では約1ヶ月の休止期間を設ける
- 再開後もアイリストへの術歴の申告、摩擦を避けたクレンジングなど、丁寧なアフターケアを継続する
目の下のたるみやクマがすっきりと解消されれば、マツエクを再開したときの目元の美しさは何倍にも引き立ちます。クマ取り手術とマツエクのスケジュールや正しい知識を事前にしっかりと身につけておくことこそが、後悔のない、安心で満足のいく目元若返り治療への第一歩です。
まずは事前のカウンセリングで、ご自身の現在のまつ毛の状態や普段のメイク習慣を担当医へ率直にご相談いただき、安心して治療の第一歩を踏み出してください。
美容医療において「急がば回れ」という言葉は非常に本質を突いています。ほんの数週間マツエクをお休みすることは、長い目で見れば合併症を防ぎ、一生モノの美しい目元を手に入れるための取り組みとなります。不安な点があれば一人で抱え込まず、カウンセリングの際に専門医にご質問ください。