粉瘤(ふんりゅう)・アテロームとは
粉瘤は、別名:表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)、アテロームと呼ばれる皮膚の良性腫瘍(デキモノ)です。よく、粉瘤(ふんりゅう)で悩まれている方が『脂肪のかたまりができた』と言われるのですが、脂肪の塊=脂肪腫とは似て非なるものです。
粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の下に袋を作り、その中に古い角質である垢(あか)や皮脂などの老廃物が皮膚がたまってできた腫瘍です。
粉瘤(ふんりゅう)・アテロームの
原因
ケガなどで発症するとも言われていますが、はっきりとした原因は残念ながら分かっていません。皮膚のデキモノなので、体のどこに発症しても不思議でありません。経験的には顔や背中に発症することが多いようです。また、一個できる人は、同時に多発(背中など、他の部位にも)することあります。印象的にはその方のもった皮膚の性状=体質に依存するのかもしれません。
粉瘤の画像を提示します。↓
粉瘤|画像|
粉瘤(ふんりゅう)・アテロームの
症状
初期の症状では、小さなしこり程度の症状なので自覚されることが少ないようです。また、自分では見えないところである背中などの粉瘤を家族や友人から指摘されて来院される方も多い印象を受けます。
粉瘤は、皮膚の小さなしこり、デキモノでも腫瘍である以上少しずつ大きくなっていきます。また、大きくなっていくにつれて袋が破れて内容物が漏れ出ることがあります。それだけでも炎症が起きて痛みを伴うのですが、皮膚の回りに存在する細菌が感染を起こしてあっという間に2〜3倍の大きさに腫れ上がってしまうことがあります。その結果、中では多量の膿が貯留して痛みを増して、熱を持つことになります。この状態を『炎症性粉瘤、感染性粉瘤』と言います。
肥大化した臀部(お尻)にできた直径8cmの粉瘤
粉瘤(ふんりゅう)・アテロームの
治療
粉瘤における原則的治療法は、手術による摘出です。それも、炎症を起こす前の状態で治療することが望ましいです。最小限の手術創で確実に袋ごと取り出して再発を予防することがこの治療における重要なポイントです。
そのためM’s(エムズ)では以下の2種類の治療をご用意しております。
①標準的粉瘤摘出法(従来法)
②くり抜き法・ヘソ抜き法
①標準的粉瘤摘出法(従来法)
粉瘤にはヘソと言われるものが存在します。実は、このヘソを入り口として古くなった角質や皮脂が入り込むのではないかと考えられています。腫瘍の本体である固まりが取れても、ヘソが残ると再発する可能性があります。したがって、ヘソを含めるような形で下図のように紡錘形(ひし形)に皮膚切開線をデザインして袋ごと一塊として摘出するのが従来の方法です。
従来法の症例を紹介します。↓
青で丸くマークした部位が、粉瘤の大きさを示しています。上図のように皮膚の中央部に黒くヘソのようの凹んだ部位があったのでそれを菱形にデザインしています。
粉瘤を取り出すと玉ねぎのように球体のデキモノが摘出されました。
術後1ヶ月の経過です。1ヶ月ほど経過すれば傷はほとんど目だたくなります。
*デキモノが小さければ、それに応じて手術範囲も小さいので、傷も小さくすみます。
②くり抜き法・ヘソ抜き法
くり抜き法とは、従来法と同様にヘソを含めますが、従来法に比べて小さな手術創で行います。小さな穴をあけ、そこから粉瘤の内容物を絞り出した後に、しぼんだ粉瘤の袋を抜き取る方法です。
くり抜き法の最大のメリットは以下の3つがあります。
- 手術による傷跡が小さく済む
- 短時間で手術を終えることが可能
- 炎症性粉瘤にも行える
デメリットとしては、過去に自分で中身を絞り出したことがある場合や痛みや腫れなどの炎症が起こったことがあると、袋の周囲が癒着が生じます。くり抜き法は小さな穴=手術創で行うので従来法に比べて完全に袋を取り出せない場合があります。
通常のくり抜き法では、小さなを穴を開けるのにパンチという円形のメスを使用します。一方、M’sでは円形にはせずに従来法のようなひし形で皮膚を切開して穴を作ります。
理由は下図のようなことです。
円形の傷は端と端が『犬の耳』のように立ってしまい縫合線に歪みが生じます。ですが、ひし形にできた傷は端の切り口が鋭角なので縫合すると綺麗な線状となります。
実際のM’sくり抜き法が以下となります。
その他のM’sくり抜き法
↓
粉瘤|M’sくり抜き法|症例1
粉瘤|M’sくり抜き法|症例2|
粉瘤|M’sくり抜き法|症例3|
次に炎症性粉瘤に対してはくり抜き法が有効なのでご紹介します。
*日常の業務などに追われ、気づくとこのように炎症を伴って来る方も多いのが現状です。原則は炎症を起こす前に摘出するのがベストです。
炎症性粉瘤は、真っ赤に腫れが上があり猛烈な痛みを伴います。
炎症性粉瘤の治療では、まずは腫れ物なので触らずそっとすることが先決です。また、それをサポートするように抗生剤や抗炎症剤で炎症を抑えます。この内科的治療で半分の方は炎症が収まりますが、残りの半分の方では炎症が治りません。
くり抜き法ではもちろん麻酔を使用します。ですが、通常の麻酔薬:キシロカインという局所麻酔剤は弱アルカリ性の状態で効果を発揮する薬剤です。炎症性粉瘤では膿の貯留によって組織内が酸性になっています。したがって、麻酔薬は効きません。M’sでは麻酔の効果を出すために工夫をします。薬剤を添加してブレンドすることで炎症があっても麻酔効果がでるようにしています。
M’sでは局所麻酔薬を独自のブレンドをして、酸性でも効果を発揮するような工夫をしていますのでご安心してください。
①炎症性粉瘤の状態です。
②粉瘤の大きさを点線で、ヘソを丸でマーキングしました。
③くり抜いて内容部を排出しているところです。大量の膿と溶けた内容物がでてきました。
④袋を取り出しているところ
⑤縫合して皮膚の下にはドレーンというストローの様な管を留置します。
*内容物及び袋が出されると中が空洞になります。空洞の中には術後出血する可能性があります。出血した血液が固まると血腫というものを形成します。この血腫があるだけでキズが治りにくいだけではなく、感染を起こす危険性があります。したがって、血液が溜まらないように=外に排出されるようにこのドレーンを留置します。痛みは伴いませんのでご安心ください。
⑥ドレーンだけでは不十分なので圧迫固定をします。防水シートを貼るので手術当日でもシャワー浴は可能です。
⑦術後1日目の状態です。血腫は溜まっていないのでドレーンは抜去します。
⑧術後7日目。抜糸した状態です。
*上記よりも症状がひどいときは↓このような対応になります。
↓ご参照ください。
炎症性粉瘤|M’sくり抜き法|症例4
粉瘤(ふんりゅう)・アテロームの
手術合併症
出血、感染、術後瘢痕問題(ケロイド、肥厚性瘢痕などの発生)、麻酔によるアレルギー、再発など
粉瘤(ふんりゅう)・アテロームの
料金
粉瘤手術にかかる自己負担金
露出部 ¥5,000〜¥14,000円
非露出部 ¥4,000〜¥13,000円
*露出部とは、半袖半ズボンの衣服を着用して衣服で肌が覆われない部位、例えば顔や首、前腕や膝下などの部位を言います。一方で、非露出部はその反対で衣服で覆われている部位を示します。
*費用の幅は、部位や大きさによって変わります。