
目の下のクマやたるみは、年齢とともに誰もが気になり始める悩みです。特に30〜60代になると、皮膚のたるみや脂肪のふくらみ、凹みが目立ちやすく、「疲れて見える」「老けた印象になる」と感じる方が増えます。
そのような悩みを解消する施術として注目されているのが裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)です。皮膚を切らずにまぶたの裏側から脂肪を移動させるため、傷跡が表に出ず、自然で若々しい印象を取り戻せます。
しかし、手術後に「目の下が突っ張る」「笑うと違和感がある」「皮膚が硬い」といった感覚を訴える方がいます。これが拘縮(こうしゅく)と呼ばれる状態です。
拘縮は決して失敗や後遺症ではなく、手術後に起こる正常な回復過程の一部です。ただし、知識がないまま間違ったケアを行うと、治りが遅くなったり仕上がりに影響することもあるため、正しい理解が大切です。
今回の記事では、裏ハムラ法の拘縮がなぜ起こるのか、どのくらい続くのか、マッサージやケアはどうすればよいのかを、形成外科的な観点から詳しく解説します。
裏ハムラ法による施術後の拘縮とは?

拘縮とは?
手術で操作した組織が治癒する過程で一時的に硬くなり、皮膚や筋肉が「引きつれたように感じる状態」のことを指します。
裏ハムラ法は、下まぶたの裏(結膜側)から脂肪を移動させて目の下の凹みを埋める手術です。表面の皮膚を切らずに行うため傷跡が見えませんが、内部では脂肪を固定するために筋膜(眼輪筋下や隔膜など)を細かく操作します。
この際、組織は一度剥離され、再び癒着しながら回復していくため、内部の線維化や軽い炎症反応が起こります。これが引きつれ感や硬さとして感じられるのです。
よくある拘縮の自覚症状
- 下まぶたを動かすと軽い突っ張りを感じる
- 笑顔のときに皮膚が引きつる
- 下まぶたに軽い「しこり」のような硬さがある
- 目の下に違和感が残る
これらはほとんどが正常な経過であり、時間が経てば自然にやわらいでいきます。焦ってマッサージなどを行う必要はありません。
裏ハムラ法の拘縮が起きる原因、いつからいつまで続くのか

拘縮は「炎症」「線維化」「組織修復」という3つのプロセスによって発生します。術後の時期によって、体の中では次のような変化が起こっています。
拘縮が起きる主な原因
- 1. 組織の再生と線維化
手術中に剥離された組織が再びくっつく過程で、線維芽細胞が働きコラーゲンを生成します。この過程で組織が一時的に硬くなり、引きつれを感じやすくなります。
- 2. 腫れや内出血の影響
術後は腫れや内出血によって組織が圧迫され、皮膚が動きにくくなるため、拘縮を強く感じることがあります。
- 3. 個人差(皮膚の厚み・年齢・体質)
皮膚が薄い方や代謝が遅い方は、拘縮が長引く傾向があります。逆に血流が良く回復力の高い人は早く柔らかくなります。
拘縮の時期と目安期間
裏ハムラ法の拘縮は、多くの症例で手術後2〜3週間頃から現れ、約1〜3ヶ月で落ち着くのが一般的です。
術後経過期間 |
状態・症状の目安 |
手術直後〜1週間 |
腫れと内出血のピーク。まだ拘縮はほとんど感じない。 |
2〜3週間目 |
腫れが減少し、内部の組織再生が始まる時期。軽い引きつれや硬さを感じやすくなる。 |
1〜2ヶ月目 |
拘縮のピーク。笑顔時の突っ張り、涙袋の硬さなどを自覚。 |
3〜4ヶ月目 |
組織が安定し、拘縮が徐々にやわらぐ。 |
6ヶ月目以降 |
完全に柔らかくなり、自然な動きに戻る。 |
このように、裏ハムラ法の拘縮は一時的で自然に改善するものです。焦らず時間をかけて経過を見守ることが大切です。
個人差がある軽度・中等度・重度の術後30日の経過・ダウンタイムについて、以下のページもご覧ください。
【裏ハムラ法のダウンタイム】手術直後から30日の経過/軽度(短い)・中等度・重度(長い)症例写真
術後1ヶ月続く拘縮は自然になくなるのでマッサージは控える

手術から1ヶ月ほど経っても「まだ硬い」「下まぶたが引っ張られる」と感じる方は多いですが、その時点でマッサージを行うのは危険です。
マッサージをしてはいけない理由
- 1. 脂肪の位置が安定していないため
裏ハムラ法では、移動した脂肪が新しい位置で固定されるまでに時間がかかります。1ヶ月以内に強い刺激を与えると、脂肪がずれたり左右差が生じたりするおそれがあります。
- 2. 再出血や炎症を引き起こす可能性
皮下の血管はまだ繊細な状態です。圧迫によって血流が乱れると、再出血や腫れが再発し、治癒が遅れる原因となります。
- 3. 線維化を悪化させるリスク
マッサージの刺激で炎症反応が再び起こり、線維化(硬さ)が長引くこともあります。
正しい対応:「何もしない」ことが最善
拘縮は、自然治癒力によって徐々に改善します。以下のようなケアを守ることで、回復がスムーズになります。
- 強く触れたり押したりしない
- 温めたり冷やしたりを繰り返さない
- 笑顔や大きな表情は控えめにする(過剰な筋収縮を避ける)
- 就寝時は頭をやや高くして血流を安定させる
もし拘縮が気になる場合は、医師の診察時に「軽いマッサージをしてもよいか」を確認し、指示があった場合のみ行うようにしましょう。独自の判断で始めるのは避けるべきです。
裏ハムラ法の後遺症、リスク軽減のためにすべきこと

拘縮そのものは自然に消える一時的な症状ですが、まれに長引く拘縮や癒着が原因で、見た目や機能に影響を及ぼす場合があります。これを防ぐためには、術後の生活習慣やセルフケアが重要です。
拘縮が長引いたときに見られる症状
- 下まぶたが下に引っ張られる(外反)
- 涙袋の形が不自然に見える
- 皮膚の下にしこりのような硬さが残る
- 目の左右差が強くなる
このような症状がある場合は、医師の再診を受けてください。適切な処置(軽いマッサージ指導や内服薬の変更など)で改善が見込めます。
拘縮を軽減するための生活習慣とケア
- 1. 通院スケジュールを守る
経過観察の診察は非常に大切です。医師は腫れや拘縮の程度を見ながら治癒の段階を評価しています。指示どおりに受診することで、問題を早期に発見できます。
- 2. 清潔を保ち、感染を防ぐ
感染による炎症は拘縮を悪化させる原因です。洗顔やスキンケアは医師の許可が出るまで優しく行いましょう。
- 3. 栄養と睡眠をしっかりとる
タンパク質やビタミンCなど、皮膚の修復に必要な栄養素を摂取し、十分な睡眠をとることで治癒が早まります。
- 4. 禁煙・節酒を意識する
喫煙は血流を悪化させ、術後の回復を妨げます。術後3ヶ月ほどは禁煙を心がけましょう。
- 5. 目元を強くこすらない
メイク落としや洗顔時の摩擦は拘縮の悪化を招くことがあります。コットンや指先でやさしく扱うようにしましょう。
【失敗・後悔しない】20年後を見据えた裏ハムラ法による効果
施術事例【40代/女性 裏ハムラ法の術後、目の下の膨らみがなくなり若々しい目元へ】

裏ハムラ法により、涙袋の形がくっきりと出て、目の下の膨らみが自然に整い、若々しく明るい印象の目元へと改善しています。
今回の症例のように、涙袋がはっきりしていて、そのすぐ下に眼窩脂肪が突出しているタイプの方は、裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)の最適な適応といえます。

裏ハムラ法が適応となる人の特徴
裏ハムラ法は、「下まぶたのふくらみ(眼窩脂肪の突出)」を単に取り除くのではなく、飛び出した脂肪をくぼんでいる部分に移動させて、目の下をなめらかに整える手術です。そのため、以下のような特徴を持つ方に向いています。
目の下の膨らみ(脂肪の突出)がある方
・目袋がはっきりしている方。
・加齢や遺伝により眼窩脂肪が前方に押し出されている方。
目の下にくぼみや段差(クマ)がある方
・ふくらみのすぐ下に影ができ、クマのように見える状態。
・ゴルゴ線(頬に向かう溝)や涙袋の下にできる溝が目立つ方。
皮膚のたるみが少ない方
・皮膚の余りが軽度で、主な原因が脂肪の位置異常にある方。
※一般的には40代半ばまでの方が多いですが、50代以降でも皮膚のハリや弾力が保たれている場合は適応になることがあります。
比較的若年〜中年層の方
・皮膚に弾力や可逆性(元に戻る力)がある年齢層に向いています。
※長年、脂肪の膨らみにより皮膚が伸ばされていると、元に戻りにくくなることがあります。これを「不可逆性」と呼びます。
Dr.三沢
裏ハムラ法は「ふくらみを取る」手術ではなく、「へこみを埋めて平らに整える」ことで、自然で若々しい仕上がりを目指す治療です。適応の有無は目の下の状態や皮膚の性質によって異なります。まずは医師の診察を受け、ご自身の状態を確認してみてください。
【裏ハムラ法】目の下の膨らみがなくなり涙袋がハッキリと出て若々しい目元へ
よくあるご質問
裏ハムラ法は、白目部分が上下または左右に見えている三白眼(さんぱくがん)のリスクはありますか?
裏ハムラ法は、下まぶたの裏側(結膜側)から脂肪を移動させる「経結膜アプローチ」による施術であり、皮膚を切開しないため三白眼のリスクは非常に低いとされています。三白眼は、下まぶたの皮膚を外側から過度に引き下げてしまったり、皮膚の切除量が多すぎる場合に起こることが多い現象です。裏ハムラ法では皮膚や筋肉を引っ張らず、眼窩脂肪をバランスよく再配置するため、外見上の変化は自然で、白目が過剰に見えるような状態にはなりにくいのです。
ただし、手術直後は腫れや一時的な浮腫によって下まぶたがやや外反し、白目の下側が目立つことがあります。この状態は一時的で、1〜2週間程度で腫れが引くとともに自然に改善します。過度なマッサージや強い刺激を与えると腫れやむくみが長引く場合があるため、術後はできるだけ安静を保ち、冷却や指示された点眼薬を使用して回復を待ちましょう。
術後1〜3ヶ月で収まるはずの拘縮がそれ以上続くことはありますか?
通常、裏ハムラ法の拘縮(つっぱり感や皮膚の硬さ)は、術後1〜3ヶ月ほどで落ち着き始めます。拘縮は、手術中に脂肪を移動した部位が癒着・修復する過程で自然に起こる反応で、治癒の一部でもあります。しかし、体質や回復スピードには個人差があり、術後3ヶ月を過ぎても違和感が残る方も少なくありません。
特に、術後に強い炎症や内出血があった場合、組織が硬くなって回復がやや遅れることがあります。また、年齢が高い方や喫煙習慣がある方、血流が滞りやすい体質の方は、拘縮が取れるまでに3ヶ月以上かかるケースもあります。もし1〜3ヶ月を過ぎても明らかに皮膚が引きつったまま改善の兆しがない場合、医師による診察を受け、癒着の状態や回復の遅れがないかを確認してもらうと安心です。自己判断でマッサージを行うと逆効果になる場合があるため、医師の指導に従ってケアを行いましょう。
拘縮・つっぱり感を早く治すための日常的なケアはありますか?
拘縮の改善を早めるためのケアとして最も重要なのは、「焦らず、正しい経過を見守ること」です。裏ハムラ法の術後は、脂肪が移動した部分が安定するまでに時間がかかります。無理に触ったりマッサージしたりすると、脂肪の位置がずれたり、再癒着を起こして逆に治りが遅くなる可能性があります。
日常生活では、以下のようなケアが有効です。
1.血行を良くする生活を心がける:湯船にゆっくり浸かる、軽いストレッチやウォーキングを行うなど、全身の血流を促すことで回復が早まります。
2.睡眠と栄養をしっかりとる:睡眠不足や偏った食事は回復力を低下させます。たんぱく質・ビタミンC・亜鉛などの栄養素を意識して摂りましょう。
3.医師の許可後に軽いマッサージを開始する:術後1〜2ヶ月経過して医師の指導があれば、下まぶたを軽く温めてから指先で優しく円を描くようにマッサージを行うことで、血流改善と拘縮緩和が期待できます。
4.目を酷使しない:スマホやパソコンを長時間見ると、目の周囲の筋肉が緊張し、つっぱり感が強まることがあります。適度な休憩を心がけましょう。
このように、日常生活の中で体の回復をサポートする行動をとることで、拘縮の改善を促すことができます。
腫れがなかなか引かないのですが、いつまで続きますか?
裏ハムラ法の腫れは、一般的に術後1〜2週間で大部分が引き、1ヶ月も経つとかなり自然な状態になります。ただし、体質や年齢、術中の出血量、アフターケアの方法によっては、腫れが完全に引くまでに2〜3ヶ月かかる場合もあります。
特に、以下のような場合は腫れが長引く傾向があります。
・内出血が強く出た場合:青あざや黄色っぽい色味が残ることがあります。
・リンパや血行が悪い場合:目元のむくみが取れにくく、腫れが引くまで時間がかかります。
・睡眠不足・アルコール・塩分過多の食事:体内の水分バランスが崩れ、腫れやむくみを助長します。
目安として、1ヶ月で8割、3ヶ月でほぼ完成形になるのが一般的です。もし3ヶ月を過ぎても明らかに腫れや硬さが残る場合は、脂肪の偏りや線維化(しこり)などの可能性もあるため、早めにクリニックで確認しましょう。
また、術後の腫れを最小限に抑えるためには、手術直後の48時間は冷却をしっかり行い、頭を高くして休むことが大切です。腫れが落ち着いてきたら、今度は温めて血流を促す「温冷リズムケア」に切り替えることで、回復をスムーズに進められます。
クマ取りの術後の腫れなどダウンタイムを早く終わらせる過ごし方・気をつけること
まとめ
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- 裏ハムラ法の施術後に起こる拘縮は、多くの方が経験する一時的な治癒反応です。通常は術後2〜3週間目から感じ始め、1〜3ヶ月ほどで自然にやわらいでいきます。
1ヶ月目の時点で硬さが残っていても問題はなく、焦ってマッサージをする必要はありません。むしろ過度な刺激は逆効果です。
- 拘縮を正しく理解して冷静に経過を見守れば、裏ハムラ法の本来の目的である「自然で若々しい目元」を安全に実感できます。
不安なときは我慢せず、必ず医師に相談しましょう。専門医の適切なフォローがあれば、術後の回復は確実に進みます。
時間とともに目元がやわらかく、なめらかに変化していく過程を楽しみながら、焦らず丁寧に過ごしていきましょう。